旅鳥のぼくら

たいやき

1.動き出す時間

波の音がする。


目を開けると海と雲一つない青い空が広がっていた。


いつの間にか僕は、見知らぬ島で眠っていたみたいだ。


どうして僕は、ここにいるのだろう?


立ち上がると突然、頭がズキズキ痛くなる。


キーンと耳鳴りもする。


"僕は一人だ"


僕はだんだん、意識が遠のいていき、フラッと倒れかける。


「……ィス?」


パカパカパキ、と木のようなものが落ちた音がする。


気づいたら僕は、何者かに支えられていた。


見上げると、僕と同じくらいの男の子が驚いた目で僕を見てきた。


僕の身体を優しく支えてゆっくり座らせてくれた。


「ありがとう…。君は、えっと?」


「オレは、エディだ。あんたの名は?」


「僕は……ルイス?」


「なんで疑問形?」


「いや…」


僕は誤魔化して笑った。エディもつられて笑ったあと、僕に言った。


「なぁ。オレと…。友達になってほしい。」


遠くの方でカモメが鳴いている。海風が島の木々を揺らす。エディの黄色い目は太陽のように眩しかった。








この日、僕らは友達になって、人生で最高な航海記が始まったんだ。








数年後


晴れた空。無限に広がる青い海の下で、一艘の小船が浮かんでいた。その船には二人の船乗りと犬が乗っている。


船を漕いでいる方がルイス。


お酒を飲みながら歌っている方がエディ。


愛犬のルナは人懐っこく、二人のことが大好き。


ルイスとエディは昔からの友達で、色々なところを旅してきた。どんな時でもお互い助け合いながら、困難にも乗り越えてきたのだ。


しばらくすると、大きな船が近づいてきた。


「うっひょ〜!でっけぇ船だなぁ?」


「は〜。本当だね。僕らもこれくらい大きい船で旅をしてみたいな!」


圧倒される二人だが、実はこの船は海賊船で、板歩きの刑が行われていた。板の先には、髪の長い赤毛の少女が立っていた。少女が落ちる直前、ルイスは見つける。


「ちょっと!エディ、あれ見て!あの人、女の子を落とそうとしてるよ!」


「はぇ?どこだぉ。幻覚じゃあねぇのか?」


エディは酔っ払っていて、何が起きているのか全く見えない。


「もう!飲み過ぎだよ!とにかく、海に落ちちゃったら大変だ!エディ、行くよ!」


急いで船を漕ぐルイス


「どこにぇ?」


「女の子が落ちるところだよ!」


「はぁあっ?るぅちゃん、この船にあの嬢ちゃんを落とす気なんか?!どう考えても無茶だってぇ!」


とんでもない作戦に、エディは酔いが少し覚める。


「やってみなきゃ分からないじゃないか!」


ルイスは少女を助けられるなら、どんなに無茶な手段でもやる人だった。


エディはルイスを止められず、ルナを抱きながらソワソワしていた。


少女はついに落とされた。


しかし


ドガッガガン!


少女は見事小船に落ち、激しく揺れた。


小船に持ち込んでいた物はほとんど落ちてしまった。


エディが大事に飲んでいたお酒も海の中に沈んでいく。


ぽこぽこぽこっ


「あぁああ!!!オレのぉ……オレの酒ぇ………!!」


ルナは船の揺れで、暴れてしまう。


「ワンッワン!」


ルナを抱きしめ、落ち着かせるエディ。


「ああ!やだぁ…!…ルナまで行っちゃ嫌ぁああ…!」


奇跡的に船は壊れずに済んだ。そして、少女を助けることが出来、ルイスは一安心した。少女は船に落ちた衝撃で気絶していた。


海賊船はだんだん遠ざかっていく。ルイスは追いかけようと思ったが、少女の手当ての方が大事だと判断し、一番近くにある島へ行こうと決める。


「おーい!ここで一番近い陸地を探してくれー!食べ物があったら嬉しいんだけどー!」


「クィァオー!クァオ!」


ルイスは飛んでいたカモメに声をかける。


数分経つと、カモメはルイスたちの元へ降りてきて、近くに無人島があると教えてくれた。


「クァィオ!」


「ありがとう!近くに無人島があるって!行こう、エディ!」


ルイスは再び漕ぎ続ける。







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