7.真実と崩壊

天気は曇りで薄暗く、雨が降り出しそうだった。  


昨日のように国民らは部屋に集まった。


「……。」


国民のルイスたちを見る目が昨日と違うことに気づく。


気のせいだろうと、その瞬間は思った。


作戦通り、国民は動き始めた。


ルイスたちは、合図が出たら外に出るということで、待機をしていた。


「………。」


オリビアは下を向いていた。ルイスは声をかける。


「オリビアちゃん、大丈夫?」


「…っ!うん。平気。」


明らかにオリビアも、様子がおかしかった。


エディは気にせず、ルイスに確認をする。


「いいか?オレが先頭に立つから、るぅちゃんはオレの後ろについてろ!何かあった時用に武器も渡しておくが、無理だけはすんなよ?」


「大丈夫だよ!僕だってやれる!」とルイスは元気に返事をする。


「………。」


オリビアはずっと静かだった。


窓の外から合図をもらい、ルイスたちは外に出る。


すると、国民と海賊が一斉に並んでいた。


ルイスは状況を理解できず、困惑する。


「よぉ、誰かと思えば、戻ってきたんだなぁ?元船長。」


海賊はエディに向かって話しかけてきた。


「…ッ」


エディは動揺を隠せなかった。


国民はザワザワとする。


海賊は次々に腰を下ろし土下座をする。


「勘弁してくだせぇ!もうやめましょおって!」


「人の心がないんすか、船長〜!」


「可哀想で胸が痛いっすよ!」


エディが何者かということは、昨夜の時点でバレていた。海賊たちに知らせ、ルイスたちが散歩している間、もう一度集まり、違う作戦を立てていたのだ。


エディは黙る。


すると、ルイスがエディの前に立つ。


「ちょっと待って!人違いだよ!エディは船長なんかじゃない!」


ルイスの言葉は、国民たちには届いていなかった。


「……。」


オリビアはルイスに声をかけようとするが、オリビアの母が首を振って止める。


ルイスは諦めずに叫ぶ。


「みんな聞いてくれ!!エディは絶対そんなことしない!僕が一番そばにいたから分かるよ!エディが海賊なわけない!エディは…!」


「もういいんだ!!」


エディは声を荒げる。ルイスは後ろを向きエディを見る。エディはなぜか嬉しそうだった。


そしてルイスの横に立つ。


「そうだ!オレが生き残ってる国民を奴隷にしろと命令した!そんで、オレは今日まで、ルイス王子を騙し続け、共に過ごしてきた!」


ルイスはオルビッド王国の王子、王族の中で唯一生き残った人だった。国民らは、王族全員が殺されたと思い込んでいた。「本当に、ルイス王子?」「生きていたのか?嘘だろ?!」「私たちの王子を弄んだの?」と喜びと憎しみで騒ぎ立てる。


「エディ…?僕が、王子?さっきから何を言って…。」


エディはまだ気づいていないルイスを憐れむような目で見る。そして、次々に真実を明かす。


「まだ分かんないのか?あんたはこの王国の王子で、その記憶がねぇのはオレがあんたの頭をこの銃で撃ったんだよ!あんたの家族を殺せと命令したのも、王国を焼き尽くせと命令したのも、全部オレがやった!オレが、海賊の船長なんだよ!!」


「……エディ…嘘だって……言ってくれ!」


「…騙されんのが悪りぃんだろ?いつまでたっても、惨めな奴だぜぇ。クフフ……アーハッハッハッハ!」


まるで悪役のように笑うエディの声がルイスの頭に響く。


「……は……っ…………は…っ……。」


嘘だ、嘘だ、とルイスは心の中で言い聞かせる。


ルイスはショックで頭が混乱し、ズキズキと痛くなる。


「……僕は………ぼ………くは。」


ルイスは走馬灯のように記憶が蘇り、完全に記憶が戻ってしまう。






……………






「こ…この…ッ……卑怯者がぁああああ!!!!!!」


国民は「そうだそうだ!」「殺してしまえ!」など声を上げた。


エディはルイスを見ることが出来なかった。


海賊はルイスに近づき


「ルイス王子。この度は船長がお騒がせしました〜。何なりとご命令を。是非とも我々を従者として使ってくだせぇ。」


ルイスは顔を上げ、命令を下す。


「コイツを地下牢にぶち込め!明日死刑を行う!」


「仰せのままにぃ。」


海賊はエディの腕を布で縛り、抵抗しないように抑えながら連れていく。


「…クソったれが!」


エディは怒りをぶちまけるが、海賊は上の空で何も聞いていない。


雨がポツポツと降ってきた。


オリビアはエディが地下牢へ連れてかれるのを眺めていた。

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