6.見つめる先に
四日ほど船に揺られ、ようやくオルビッド王国に着いた。
着いたのが夜だったこともあって、海賊は酒瓶を散らかして寝ていた。
オリビアを先頭に歩くと、小さい家の窓から「おーい!こっちだぞー!」と声をかけてくれた。
部屋には生き残っていた国民の一部が集まっていた。オリビアの家族もそこにいた。親は「よく帰ってきたね…。」と泣きながら抱く。
オリビアは照れ隠しで「ここで何をしているの?」と話を逸らす。
国民は海賊に従いっぱなしはもうたくさんだということで作戦を立てていた。
だが、どうしたもんかとずっと悩まされていた。
オリビアは、助っ人を連れてきたと言い、ルイスたちの紹介をした。
「こりゃ助かる!遠いところから遥々と、感謝いたします!」
と感謝をする人もいれば、何人か受け入れていない人もいた。
オリビアはいい名案を思いつき、そこにいる全員に教える。
「成功するかは分からないが、試してみる価値はありそうだ!」と賛成してくれた。
作戦が立て終わり、明日に向けてそれぞれ解散をした。
オリビアは一度家に戻り、ルイスたちは部屋に泊まらせてもらうことになった。
ルイスが眠っている中、眠れないエディは、外に出て夜空を見上げていた。
月が雲で少し隠れている。エディは深くため息をついた。
すると、後ろからよく聞く声がした。
「眠れないの?」
ルイスが声をかけた。
「え?あ、あぁ。」
エディは動揺し、曖昧な反応をしてしまう。
元気がなさそうに見えたルイスはこう提案する。
「ねぇ、ちょっとだけ散歩しない?」
「は?」
エディは思いもしない誘いにビックリする。海賊は眠っているが、起こさないように慎重に歩くルイス。エディは大人しくついて行った。
ルイスとエディは城の周りを歩く。燃えて、ほぼ原型がなくなってしまったオルビッド王国。ルイスは「ここに家とかたくさん建てられていたのかな…。」「海賊たち、なんでこんなことしたんだろう。」など、独り言を呟いていた。エディは何か違う話題を振ろうとするが、上手く言葉が出せなかった。
ついには城の中まで入り、エディは焦る。
「なぁ、ルイス。そろそろ戻らねぇか?なんか不気味だしよぉ?海賊もそろそろ起きちまうんじゃねぇか?」
「もう少しだけ…。」
ルイスは城の内装やまだ残っている置物に興味津々だった。どんどん歩き進んでいくルイス。
奥まで行くと、大きな額縁が飾られていた。
「あ!これ、もしかして国王と王妃かな?」
じっくり見ると、二人の真ん中に小さな男の子が立っていた。
「あれ……この子…。」
ルイスは引き込まれるようにじっと見つめる。
「もうやめてくれっ!!!」
エディは気持ちが抑えられず、ルイスを思いっきり抱く。
「ルイスを守れるのはオレしかいないんだっ…!どこにも…行かないでくれよ……。」
エディは初めて、ルイスに弱みを見せてしまった。
「エディ?」
状況を理解出来なかったが、エディが泣いているのに気づき、ルイスは落ち着かせようとする。
「えっと…。ぼ、僕は、ここにいるよ?だから、その……泣かないで、エディ。」
………。
「好きだ。」
「…え?」
「出会った時からずっと……。ルイスの笑ってるところも、優しいところも、仲間思いなところも、真面目なところも、たまにおっちょこちょいなところも、全部……全部!好きなんだ!!」
「……僕もエディのこと、好きだよ?」
「……クッソ………。」
エディは正直嬉しかった。
隠してた思いを伝えただけでなく、ルイスからその言葉が聞けてエディはもう十分幸せだった。
この瞬間、エディの中で覚悟が決まった。
沈黙が続き、ルイスは照れながら大きく笑った。
「…はは、あはははは!なんか、面白いね!」
エディもつられて笑ってしまう。
窓から月の光がルイスたちを照らした。
この時間がずっと続けばいいのにとエディは思った。
ガタガタゴト
向こうから物音がした。
ルイスたちは慌てて、物陰に隠れた。
エディは口を押さえる。ルイスは隙間から様子を見る。
近づいてくると、人ではないことが分かった。
「ルナ!」
物音の正体はルナだった。
「ワンワン!」
ルナははしゃぐ。
「ななな、なんだぁ!脅かすなよ?!」
エディはビビり散らかす。
「はは!迎えにきてくれたんだね!ありがとう!」
「ワン!」
ルイスはルナをいっぱい撫でる。
ルナは撫でられたあと、また走って戻っていく。
「あ、ルナ!待って!エディ、行こう!」
ルイスはエディの腕を掴み、追いかける。
エディは幸せを噛み締めた。
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