5.揺らぐコンパス

「お疲れさぁ〜ん!オレらの圧勝だな!」


エディはキメ顔をする。


「ワンワン!」


ルナは三人の周りを大きく周り興奮する。


オリビアも自信満々に頷く。


ルイスはエディに抱きつく。


「よかった、エディ!てっきり死んだかと…。生きててよかった!!」


エディは抱き返す。


「だ〜から、言ったろ?オレはこんなとこで死ぬようなアホじゃねぇって。」


「本当にどこも怪我してないの?」とオリビアは聞く。


「当たりめぇだろ!オレの反射神経なめんなよぉ?」


「はいはい、すごいですねー。」


「ちょ、ビアちゃん?聞いといて、その反応はないだろ〜?」


とエディとオリビアが話している間、ルイスは泣いていた。


オリビアはそれに気づく。


「ル、ルイス?なんで泣いてるの?」


ルイスは泣きながら答える。


「……僕のせいで……迷惑かけちゃって……!……っ……本当に…ごめん…!!うぅ…!」


二人は必死に慰める。


「迷惑なんかかけてないよ。皆助かったわけだし?」


「でも僕……いつも助けられてばっかで……!」


「それでいいんだよ!るぅちゃんはるぅちゃんのままで。そうさ、るぅちゃんにはオレがついてんだからよぉ?」


「……でもぉ……でも!!」


珍しく後ろ向きなルイスに二人は顔を見合わせる。オリビアはルイスに声をかける。


「…はぁ。そんなに助けられっぱなしが嫌なら、私のお願い叶えてもらおうかな。」


「…お願い?」


オリビアは海を見ながら話す。


「呑気に旅してる今でも王国は荒れ続けてる。貴方たちと過ごしてきて、思ったの。王国もこんな風にまた笑い合える平和な日々に戻ってほしいって。探していた"いい方法"は案外近くにあったみたい。」


ルイスは目を見開く。


「二人とも。王国を救うのを、一緒に手伝ってほしい。」


「何か力になれるかな…。」とルイスは不安げに言う。


「なれるから、お願いしてるんでしょ。」


ルイスは胸に手を当てて、深呼吸をする。


「…うん!オリビアちゃんとオリビアちゃんの王国のために、全力を尽くすよ!」


「ありがとう!」とオリビアは笑顔で言った。


エディは真剣に悩んでいるようだった。


「エディは、どう?」とオリビアは聞く。


「ん〜!ちょっと急すぎんじゃねぇか?オレたちが行ったところで、国一つ救えるかって言われたら怪しいと思うんだがぁ。」


オリビアは不思議そうな顔で答える。


「そう?二人もいれば、状況が変わるかもしれないし。救世主になれちゃうかもよ?」


「救世主…かぁ。」


ピンと来てないエディにオリビアは意外だと思った。


ルイスは後押しする。


「エディ、僕たちでオリビアちゃんの王国を救いに行こうよ!エディがいれば心強いよ!」


「ん、ま〜、こん中ではオレがいねぇとやってらんねぇけどよぉ。そういうことじゃねぇんだよなぁ…。」


「うざ…何が言いたいの?」


「あ〜…」


エディはずっと思い悩む。


「エディ!友達が困ってたら助けないと!」


エディはルイスを見る。一瞬だけいつもと違う目線を感じたルイス。


「はぁ〜!ったく、しょーがねぇなぁ!オレも行ってやるよ!ルイス、オレが守ってやっから、しっかりついてこいよ!」


「は〜!うん!僕も頑張るよ!」


オリビアは引いた目でエディを見る。



夜になり、ルイスとオリビアは疲れてすぐ寝てしまった。


エディは夜の海を静かに眺めて、考え事をしていた。


(大丈夫だ…。オレから…話せば。)


「…ッ!」


エディは突然心臓がバクバクして痛くなる。


(……話したら…?…オレたちは…。ルイスと…もう……。……一緒に…。)


「……怖い…っ。」


不安で押しつぶされそうになる。


「ク〜ン」


ルナはエディを心配そうな目で見た。


「ルナ…。」


エディはルナの顔を優しく撫でる。


「あんたらなぁ、ちょっとはオレを叱ってくれてもいいんだぜ?」


エディはルイスの寝顔を見る。


「…絶対に…逃がすものか……。」



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