12.調査どころじゃない!
数日後、エリスは神殿で祈りをしに外出、エルネストは別の仕事、そしてユリアスは…図書室で最悪な時間を過ごしてた。
「(ヤバイ!どうして皇太子がいるの!?)」
「ちょっと待て、見ない顔だな」
「(ば、バレてないよね)自分は新しくエルネスト皇子殿下の従者に就いたユーリスと申します」
「ユーリス?新しく従者が入った事は報告されてないぞ」
「…(マズイな、不審人物って事で追い出されたら終わりだ…どうしよ)」
「ただでさえフィリスタルの王女が姿を消して騒ぎになってると言うのに…お前は誰だ、何が目的だ」
「で、ですからエルネスト皇子殿下の従者を…」
「報告が無い以上不審人物と同じだ、ケイオス、こいつを牢につ「そんなんだからフィリスタルの王女に逃げられたんだろ」!?」
「(何で此処にいるの?!)」
アルベリクに捕まった所を客人のローレントに助けられた。
思わぬ人物の登場にアルベリクとケイオスは驚いていた。
「騒ぎになってるからこそ情報が伝わって無かったんだろ。コイツは皇子の従者だ、間違いない」
「な、何故オルタナの貴方様が…はっ!そう言えば…皇子殿下が誰かを呼んだとか聞いた気が…」
「…アイツは何を考えてるんだ。エリス嬢の釈放、オルタナの第四王子を呼び出すとか…」
「おっと、問い詰めに行くなよ?皇子なりにも考えがあるみたいだしな。
邪魔しに行くなら、自分の問題を解決させたらどうだ」
「っ!…」
「王子殿!無礼ですぞ!」
「お前もだ、そもそも何でフィリスタルの王女は居なくなった?その原因もわからないのか?」
「っ…」
悔しそうな表情をするケイオスと何も言わないアルベリク、ユリアスは目の前のやりとりに冷や汗が止まらない。
その居なくなった王女は今目の前にいる見ない顔の人間になってる。
ネタばらしはもっと後だ、今すぐ立ち去りたい…
ローレントの行動は有り難いが、今すぐ事を終わらせて欲しい。騒ぎを起こしたくない…
「お、王子殿下!大丈夫ですから!」
「でもよ…」
「騒ぎを起こしたくないんです」
「……とにかく、よく考えて動くんだな」
「失礼します…」
「「……」」
ローレントを連れて図書室を離れた。
何とか難は逃れたが…色々悪すぎる…
「…あんなのと結婚するのか?」
「はぁ…しませんよ…第一、私は皇太子妃になる気は一切ありません。妃になるのは聖女のエリスです」
「和平交渉の条件を勝手に変えたのはお前じゃないのか?」
「(誰から聞いたんだよ~ミアの洗脳も厄介だけど、純粋に悪評を信じてる相手も厄介ね~)誰から聞いたのかしりませんが、あなた様にだけ言っておきますが、和平条件を勝手に変えたのは国王と妹です」
「?父親だろ?なんで実の父親を敬称で呼ぶんだ?」
「私はあの者を父とは思ってません。向こうも私を娘と思ってないみたいですから、同じようにして何が悪いのですか?」
「……いや…別に」
「(やっぱり他国へは【悪評】は流れてるけど私が冷遇されてたとか、放置されて育ったとかは伝わって無いのね。
うぅん…確かにどう生きていたかを言ったら悪偽りの情報と矛盾が生まれるから…避けたと思うけど、社交界や表に一切出てないのを知ってる人間からしたら、それすら偽りの情報だってバレるはずだけど…どうでもいいけど、肝心な所を省いて伝えると後で痛い目に遭うよって話)
それで、王子殿下は何の用でこちらに?」
確かにそうだ、他国からの客人だが…悪いが図書室に用があるように見えなかった。
「…たまたま通りかかっただけだ」
「(本来客人は客人用の宮殿に通されるって皇子は言ってたけど…此処は皇族が住まうエリアだから…無理があるわね。でも此処はあえてスルーよ)そうですか」
「……」
気になる事は多い、だが客人の彼に対して自分は客人以下の存在だ。婚約を結べていれば状況が変わったか…変わらないだろうな。
そんな事を考えながらローレントと別れた。
未だにミアの広めた悪評を鵜呑みして嫌がらせを続けてる使用人や騎士達だが、ユリアス王女が消えた事で退屈してるようにも見える。
そのせいか、使用人同士、騎士同士で弱者?に嫌がらせをしている…
あまり良い光景ではない…
色々面倒な事に変わり無い、ユリアス王女など居ても居なくても同じなのだ…
「(何とも言えないわね、とにかく今は目の前の問題からね。元凶の魔女アスリルを先に成仏させてからのミアの方が絶対に安全だから)」
あの後、フィリスタルを訪れるよりも先に魔女アスリルを探し成仏させるのを優先する事に決まった。
作戦としてはエルネストの視察と同時進行で魔女を探す。今の仕事が片付いたら影武者と入れ替わって視察に戻る、もちろんユリアスも同行…だが、違うのはエリスも参加するって事だ。残念ながらローレントはずっと同行は出来ないようだ…
彼なりにも魔女の情報を集めてくれてるようだ、しかも役に立つモノ、こちらでは手に入らない情報ばかり。これにはエリスも大興奮…神秘の存在マニアからしたら宝の山らしい。
彼がこちらに来てまた数日しか経ってないが、流石王族のまま自由を手にした男
恐るべし…自由になれたらたった数日で大量の情報を集める事も出来るのか…
視察と外出調査はユリアスとエルネスト、情報による調査はエリスとローレント
絶対にアルベリクにバレてはいけない…。
3人は難しくないが…一番大変なのはユリアスだ。
先程見習い従者ユーリスがアルベリクに目を付けられてしまった。部屋がバレたらもっと大変だ…行方を眩ました性悪王女がまさかの皇子の見習い従者に扮してるとは誰も思ってないだろう…。
だからと言ってローレントと行動してるのも怪し過ぎる…婚約するために来たのに他国の王子と行動をするとは…流石にアウトだ。
見習い従者が客人の側につくのは…微妙だ。
王女が皇太子を差し置いてオルタナの王子と共にいるとか…
調査どころではない!
まだ婚約を結んでないからマシだが、結んだ後に行動してたら大問題だ!
「ハハハ…ヤバイ、どうしよシルヴァ…まずい事になったよ。従者と調査上手くやらないと大変な事になるよ…」
『む、無理はいけましぇん…王女に戻ってカミングアウトも1つだと思いましゅ…』
「そこなんだよねぇ…部屋を変えてないから何時かは絶対にバレるんだよね…」
『きゅん…』
確かにそれも良いが…事が魔女の事が解決してからの方が色々良いだろう…
とりあえず…視察に備えよう…
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