13.魔女探し 1
3日後、ユリアスはエルネストと共に視察に戻った。
ローレントは国に戻ったり帝国に滞在を繰り返してるようだ。
キースに持たせた水晶には綺麗に記録が残されたいたので報告も難なく書けたとのこと。
残りは精霊が生息している『花の森』、獣人や竜人等の亜人が暮らしている『広野』のみ。
「亜人も神秘の存在に連なる者だから、あの王女の洗脳を受けてないと思うよ。
あと、広野には少数だけど【魔族】もいる。
あそこは魔物が出現しやすくてね、それもあってか広野の民は皆戦闘能力に優れてる戦士ばかりなんだ。女性も子供も、皆が生まれながらに優れた戦士となって生まれる所だよ。
それに広野って言ってもそんなに広くない、強いから彼らだけでも小国が作れるけど、帝国の為に戦う事を選んだそうなんだ」
「なるほど…帝国の隠れた戦力と…」
「そう、人間の戦闘力が上がった事もあるけど、実は帝国がこの大陸一の戦力を持つ理由は彼ら【広野の民】が理由なんだ」
「公にしたら大変な事になりますね…」
「公開しないよ、大事な帝国の戦士達なんだから。秘密にするさ」
「そうですよね…(魔族か…ルキス大陸にもいるのかな、魔族も神秘の存在に関連してるって言うからいるかもしれないけど…ねぇシルヴァ?魔族って何?)」
『えっと、魔族は生まれながらに魔力が多く、戦闘能力や魔法術が高く、全てにおいて最も優れてる種族とも言われてましゅ』
「そうなのね。他には?」
『えっと…魔物と魔族は全くの別物なんでしゅが、今でも魔族の方を魔物と言って軽蔑したり罵倒したりしてましゅ…最強の者と言われても、立場が悪く低い位置になってしまってましゅ』
「強すぎても魔物、弱すぎても神秘の存在の恥と…嫌な時代ね。魔物と魔族の判断が出来ないだなんて」
『あぅ…ちなみに、魔族は元々妖精なんでしゅよ~妖精は精霊と違って力の一点張りではないので、あらゆる魔法が使える者なんでしゅ』
「なるほど、だから魔族が神秘の存在と連なる存在なのね」
『はい!』
「ありがとう、色々わかったわ」
『エヘヘ』
シルヴァを抱き上げて頭を撫でたり抱き締めた。可愛い…ホントにぬいぐるみみたいだ。
向かいに座るエルネストの事を忘れてシルヴァに夢中になるユリアスだった。
従魔との戯れの邪魔が出来ないエルネストは遠い目をして2人を見ていた。
☆★☆★☆
それから数日後、ジョシュア経由でエリスから手紙が届いた。
何でも魔女アスリルの新たな情報が手に入ったと。
今の時期は暑さが激しい夏が終わって涼しくなってきた秋。
冬は一部の魔物の動きが鈍くなる、魔女アスリルもその類との事。
「魔物とはいえ、元となった生き物と同じ生態をする…ということはアスリルは…」
「多分竜脈の近くに現れると思うよ。元はドラゴンの眷属、本能で持ち場に戻ろうとするはずだって読みだね」
「なるほど…」
それなら変に帝国中を探し回る必要は無い、竜脈周囲をメインに探せば良いだろう。
それから数日後…エルネストの視察が終わった。
ユリアスも怪しまれないように皇城に戻った。
当然城の者は消えた王女が帰ってきて驚いた。王女は逃亡中に視察をしていたエルネストに見つかり連れ戻されたって設定にした。また、見習い従者ユーリスはあの宿屋で待機してるって事にしてある
視察の間、魔女の居場所を探してみたが何も見つけられなかった。
魔女とはいい、元はドラゴンに使えていた巫女だ、シルヴァと同じ眷属…そう簡単に全てを見せない。
シルヴァから青いリボンを外し、赤いリボンに魔法をかけて着けてあげた。
赤いリボンで印象がまた変わる、でも可愛いことに変わりない。
小さなシルヴァを抱き上げ、今日も一緒に本を読んだ。ふわふわで小さな手足ではペンを握れない、出来てもペンを咥えるくらいだが、それでは書けない。
シルヴァは徐々に読めるようになってきた。エルネストと共に行動していた時も練習はしていたが、今のような練習では無かった。本を持ってきてなかったので宿屋のポスターや新聞で練習していた。
「ユリアスさま」
「なぁに?」
「皇太子さまはどうして妹君の魅了にかかってしまったのでしょうか?」
「そこが問題なのよね…神秘の存在の力と祝福を持ってるにも関わらず一部の人々はかかってしまってるのよね」
そうだ、エルネストや従者ヨシュア、そしてジョシュアは洗脳を食らっても正常だった。
しかしアルベリクや皇帝夫妻はかかっていた。聖女エリスや使用人、騎士は純粋に悪評や噂を鵜呑みしているくらいだ。
もちろん悪評や噂では鵜呑みしていたのもあるだろう、しかし…それだと何故エルネスト達は正常だったのだ?
同行中に尋ねても本人でもわからないと言っていた。
考えられるとして、エルネストとアルベリクの違いはミアと関わっていた時間だろう…
アルベリクはミアと文通を交わしていた、ミアの執筆は姿が無くても相手を魅了してしまう恐ろしい力、これを皇帝夫妻に見せていてもおかしくはない。
…本当にそれだけか?
だとしたらエルネストも読んでるはずだ。何故…読んでもかからなかった?
「あとは…贈り物とかかしらね」
「おくりもの?」
「そう、あの国では好きな人や大切な人に手作りのハンカチ、もしくは市販のハンカチに刺繍を入れて渡すと想いが伝わるとか…おまじないみたいなのがあったのよ」
「ってことは、皇太子さまはミア王女さまのおくりものを持ってるって事でしゅか?」
「ミアが好きな人だからね、持ってる可能性は高いわ。むしろハンカチを受け取った事で想いが強くなったのかもしれない」
「ひぇ…純粋な心ほどかかりやすいって事でしゅか」
「そう、怖いわね…貴方はかかっちゃだめよ」
「ボクは精霊だからかからないでしゅ」
「アハハっ 擽ったいよ」
ユリアスの顔にうりうりと小さな頭を擦り付けるシルヴァ、擽られながらもシルヴァを撫でるユリアスだった。
シルヴァを撫でながら今後の事を考えた。
「(ミアの魅了、洗脳は一部の祝福持ちにも影響を与える…贈り物、手紙、接触…これら全て体験した皇太子を軸に皇帝夫妻や使用人や騎士に感染する形でこの国に広まった。
対するエルネスト皇子は身近な所に居たにも関わらず洗脳から逃れられた。恐らくミアと会って無いこと、贈り物を貰ってない、手紙を間接的に読んだくらいだから…そして何より強い意思「エリスこそ皇太子妃に相応しい」…この意思が強かったから受けなかったのかもしれない。
本当にそれだけとは限らない、この国には浄化の炎が有る…これも有ったから全員が洗脳されなかったのかもしれない。
魔女アスリルを成仏させても既に彼女の力はミアに流れてる…それも強力なモノが…
アスリルは繋ぎ…己を繋ぎにして力を与えた者だけが残っても力が残るようにした。
成仏されても力はミアの体から消えない。ごく僅かなモノは消えるかもしれないが全ては消えないかも」…)」
魔女もそうだがフィリスタル王国に行く為のきっかけが欲しい…
痕蛇姫(アダヒメ)~嫌われ王女は強かった~ 茜色 @Kalm
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。痕蛇姫(アダヒメ)~嫌われ王女は強かった~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます