9.顔が見えない協力者
数日後、ユリアス、エルネスト、エリスは一室に集まって作戦会議をしていた。
フィリスタル王国に行く為の理由作り、ユリアスが戻った時の印象作り、アルベリクを連れていくかどうとか…皆が意見を言い合っていた。
エリスが早いうちに釈放されたのは良かった。エルネストの部下の監視がついてるので一応問題は無い。
監視に聞かれないように…色々話し合った。
「まず、フィリスタル王国に行くにあたって第一印象は大事だ。こちらが格の違い見せつければあちらは変な事は出来ない。でもユリミア王女は別だ。彼女は気にせず接してくるはずだ。
兄上を連れていくけば隙を作れる。でも問題はどのタイミングでユリミア王女の力を封印するかだ」
「アルベリク様とユリアス王女様は婚約を結んでいないのですよね…そうなると、婚約を結んでもいないのに一緒にいるのは可笑しいかと…」
「だからといってエリスを隣に立たせるのもね…君は僕の見習い従者に扮して行けば良いけど…」
「うぅん…」
『そこが問題でしゅね…』
作戦が思い付いても、フィリスタル王国をどのような理由で、どんな状態で行くかが問題だ、言い方は悪いがアルベリクが居ても居なくても状況は変わらないのだ。
何か…大きなきっかけが欲しい。ミアと会いたいだけでは絶対に駄目だ…
あちらから来てくれれば話しは変わるが…
3人が頭を悩ましてる時だった。
ヨシュアが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「た、大変ですエルネスト様!」
「どうしたのヨシュア?何かあった?」
「あ、あの方が――」
「はぁ!?」
ヨシュアの話を聞いたエルネストは驚きながら部屋を出ていった。
何の事なのかさっぱりな2人とシルヴァ…顔を見合わせて困った顔をした。
「あの方って言ってたから誰か来たのでしょうね」
『…何だかクレイさまと似たモノを感じます』
「え?」
『神秘の存在の気配を感じましゅ!』
子ギツネの意味深な発言、この国や神秘の存在を自分より知ってるであろうエリスに聞いてみた。
「…あのエリス様」
「っ!どうかエリスとお呼びくださいユリアス王女様、無礼者に敬称は不要です」
「それは出来ないわ。貴方は次期皇太子妃、敬称は外せない…」
「……!」
「きゃんきゃん!」
大きな尻尾をブンブン振ってるシルヴァが彼女の足に頭を擦り付けてる…この光景にエリスもにやけてしまった。
「あ、フフッ 可愛いですね」
「可愛いでしょ?私の従魔なの」
「従魔って使い魔ですよね?」
「そうだけど、この子の本当の主は別の方なの。その方から譲り受けたから従魔なの」
「なるほど、貴方のご主人様はどんな方なのですか?」
「きゃん!(クレイさまでしゅ!)」
残念ながらエリスは神秘の存在との繋がりを持ってない。シルヴァが見えても声は聞こえないようだ。
「この子はね神秘の存在の眷属なの。とても小さいけど立派な精霊なのよ」
「なっ!眷属でしたか!失礼いたしました!またご無礼を…」
「気にしないで、でもこの事は誰にも言わないで。そしたら許すから」
「は、はい…絶対に言いません」
「ありがとう…エリス」
「!!」
そう呼ぶとエリスは静かに笑った。
しばらくすると、エルネストが戻ってきた。隣には…見知らぬ男がいた。
軍服のような服を着た…紺色の髪の男だった。
何故か顔がハッキリと見えない。
しかし…エリスやエルネストにはハッキリと見えてるようだ、どんな顔をしてるのだろう。
エリスと共に頭を下げた。シルヴァもペコリと下げたが…ごめん寝になってしまった。
「えっと…どう話せば良いかな…まず、彼は…前にユーリスに話した人で、手紙を出した相手だよ」
「えっ?数日前に出したばかりでは?」
「そう、僕は数ヵ月後に来てって書いた。でも今日来た。早すぎるでしょ…。
とにかく、エリスにも紹介するね。
彼は【ルキス大陸 オルタナ】の第四王子、『オルティナ=フォン=ローレント』、ローレント王子とはちょっとした仲でね…この通りすぐ行動するタイプのヒトだよ」
初めて聞く場所と名前だ。
これまで様々な書物を呼んできたが…そのような国や大陸の事は聞いたことは無い。
しかしシルヴァは知ってるようだ。
「ルキス大陸?オルタナ?」
『ルキス大陸は神秘の存在が治めてる国しかない大陸でしゅ。オルタナはクレイさまと同じ『神々の聖遺物』のご神体に選ばれた古龍さまと血族が治めてる国の名前でしゅ』
「古龍の血族?って事は…目の前の第四王子は…」
『ほんのちょっとでしゅが、クレイさまと似たモノを感じましゅ。第四王子様も古龍さまの血と力と…あと1つ持ってるみたいでしゅ』
「…それが何かわかる?」
『うぅ…何かが邪魔をしてハッキリしないでしゅ…』
「ハッキリしないか…(シルヴァが感じ取れないのと同じように…私もこの人の顔がわからないわ。他の人には第四王子の顔は普通に見えてるのよね…どうして私だけ…)」
…絵の人物の顔を隠すような黒いモヤが…ユリアスの見るローレントの顔にあった…
髪はギリギリ見える、目を凝らして肌や目の色を見るが…残念ながら見えない。
まるで見ることを拒絶させられてるようだ…
幸い声は普通に聞こえる、エルネストやアルベリクよりも低い…顔は見えないが…パッと見アルベリクと同じくらいの青年みたいだ。
エリスは普通に接してるが…彼女の顔が時々青ざめてる…
ローレントの方も見ると…顔はわからないが動作から嫌がってるように見える…声も少し…怒りを感じる。協力者なのよ…ね?
エリスはわざと触ったり大胆な行動をしてない…
…わからない事が多すぎる…取り敢えず流れに身を任せて対応だ。
その後エルネストから彼と部屋を出てほしいと言われてたので部屋を出た。
あの2人でやる作戦もあるだろう、そこは任せよう…
そして…問題な今の状況…ユリアスはローレントの顔がわからない、シルヴァは何かを感じ取れない、そして何故か不機嫌そうなローレント…
最初から邪険に扱われるのも罵倒されるのも慣れてるから怖くない…が、顔が見えないだけで別の恐怖を感じるのは何故だ。
こうなったら、シルヴァに聞いて想像するしかない。
「シルヴァ、この人はどんな顔をしてるの?私はこの人の顔が何故か見えないの。教えてくれる?」
『わ、わかりました。えっと、黒みがかった紺色の髪に…えっと…水色と紫の2色の瞳?をしてましゅ』
「オッドアイって事?」
『いえ、瞳自体が2色なんでしゅ。水色から紫になってるグラデーションになってるんでしゅ』
「なるほど、顔立ちは?」
『この国の皇太子でんかよりも…色々強そうな感じでしゅ。整ってる方だと思いましゅ。ボク“いけめん”はわからないので…いけめん、なのでしゅかね~』
「と、とにかく好青年なのね。良いわ、ありがとう」
シルヴァの説明でだいたいはわかった。取り敢えず…それっぽい顔立ちを想像する事にした。
だから…シルヴァとの会話に夢中になってて忘れてた…
…隣に客人が居ることを…
顔は見れないが明らかに怒りを感じるオーラを放ってる…やらかした。今の自分は見習い従者のユーリスだ。
やることは一つ、客人をもてなさなくては
「はっ!も、申し訳ございません!今お部屋にご案内いたします!」
「……」
『お、怒ってはないみたいでしゅ』
「(ヒィー!別の意味で怖すぎる!顔が見えないだけで違う恐怖を感じる!)」
空いてる
「……」
「(気まずいっ!せめて顔が見れれば全部変わるのにっ!えぇい!ままよ!嫌われても良い!当たって砕けろ)えっと、自分はエルネスト皇子殿下に使えるユーリスと申します」
「…チッ」
「(なっ!舌打ちしたよ!?この人!)」
『……』
まさかの反応に動揺するユリアスと固まってしまったシルヴァだった。
この王子は何者なんだ…
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