エリスの恋 3
そして…1週間後 未だに寝込んでる
まさか1週間も寝込んでしまうとは思ってなかった。
熱がなかなか下がらず、身体を起こす事も苦、食事も食べられず、水を飲むだけで喉が痛む…間接の痛みが一番辛かった。
それでも何か口にしないと薬が飲めなかったので…痛みと戦いながら料理を食べた。
そんな中、またナソスが嬉しそうな様子で入ってきた。ユリアスが体調を崩しててもお構い無く入ってきて話を始めた。
「アルベリク皇太子様とエリス様の仲が更に深まったのです。気付いたら恋仲になってるかも知れませんね~?」
「そう、(上手く行ってるみたい)良かったわね」
今日も適当に流そうとした時だった…
監視達が姿を現してナソスを見たのだ。珍しい…
「メイド長、流石に空気を読むべきだ。それは今王女殿に話す事か?」
「え?」
「見てわからない?王女様、体調崩して寝込んでるのよ?」
「調査が進んでるのなら良いが、わざわざお姫様に言うことなのか?」
「ってかエリス様、調査よりもそっち目的で来たの?」
「まぁ…今更だろ。進展しようが不仲になろうがどうでも良い。今はそっちよりも王女サマの風邪を治すのが優先だ」
「そうね」
「ほんと、はいシルヴァちゃん。ジャーキーよ」
「きゃん!(犬じゃないでしゅ!でもジャーキーは欲しいでしゅ~)」
「えっ?!…あの…」
「メイド長、用無いなら帰ってくれ」
「っ!」
ナソスは顔を真っ赤にして部屋を出ていった。
まさかユリアスが寝込み、監視達に反論されるとは思ってなかったのだろう。
「頭痛い…(シルヴァは監視が見てくれてるから良いとして、早く体調を戻さないと…)」
体調不良への回復魔法の効果は微妙だ。怪我なら余裕だが、体内のモノの治療、回復は聖女や聖職者なら出来る。
ユリアスの回復魔法は治せるが…今は使う気にもなれずこの
しかし、エリスと条件付きの会話を交わしてしまったからにはこんな事で呼ぶわけにも行かない。自分の風邪よりもアルベリクとの仲を進展させるべきだ。
また、ダンが言うにはユリアスが寝込んだ事を知ったアルベリクとエルネストが彼女が寝てる間に来てたそうだ。
アルベリクは深刻な表情をしていた、エルネストは何かを持ってきてたとの事…それをどこに置いたかはわからないが、部屋のどこにエルネストの贈り物があるそうだ。
「ど、どこに置いたかわかる?」
「死角に移動されて誰もわからないの、王女様ならわかるとか言ってたような…」
「な、何よそれ…ま、まぁ良いわ。もう少し楽になったら探してみるから…ぅ」
「きゅ~ん…(ユリアスさまぁ…無理しちゃダメでしゅ)」
「ごめんねシルヴァ…貴方達も…うぅ…(頭が殴られてるみたい…)」
謝罪をした途端ユリアスはバタリと倒れて眠ってしまった。
少しでも症状が和らげば回復魔法が使えるのだが…これは色々大変だ。
☆★☆★☆★
その頃、調査に一段落がついたのかエリス達は客室にいた。
神官があと少しで調査が終わると話していたが、それを聞いたエリスはショックを受けた。
終わってしまったら滞在も終わってしまうからだ…
ユリアスが体調を崩し寝込んでる事は伝えられてるが…恋敵を復活させる訳にもいかないのか…行こうとしない。
また、アルベリクとエルネストが見舞いに行ってるのが気に食わないそうだ
しかし周りへのイメージを壊さないためにも…嫌でも見舞いに行かなければならない。
これも皇太子妃になるためだ…
時間があったので渋々ユリアスの元に行くことにしたエリスだったが…案内された場所を見て絶句した。
相手は王女だ、なのに…彼女が使ってるのは客間ですらない物置部屋…のような部屋。使用人が使うような部屋だ。
ノックをしてみるが返事がない。それが見舞いする人への態度かと思ったが中に入った。
中に入ると唸されてるユリアスと、彼女を心配してる青いリボンを着けた白い子ギツネが居た。
「(何この毛玉?ぬいぐるみではないみたいね…)そう心配しないで、ご主人様は大丈夫よ」
「きゅ~ん…」
「……(誰か来たみたいだけど頭が痛くてそれどころじゃないんだよね、目開けられないくらい怠いし…)」
「…ワタシの言うことを聞いてくれたら治療してあげるって言おうと思ったけど、会話すら出来ないんじゃね…帰ろ」
「!!」
エリスは治療魔法を使わず部屋から出ていった。何しに来たんだと思ったが言えなかったシルヴァ…
この異常な行動に監視達はドン引き、あれが聖女とは思えない…信じられないと言った。
聖女といえ貴族の娘が他国の王女に向かって命令するような言い方…こんな娘が皇太子妃とかダメだろと思うが彼らだった。
「見た?今の言い方…信じられる?」
「ヤバイな…みんなあの聖女を慕ってるのかよ…」
「ダン隊長、これケイオス様に報告して良いか?」
「いや…報告するにしても猫を被って逃げられるだけだ。毒を仕込んだ犯人と同じようにタイミングを見計らって対処するべきだ」
「周りの眼を覚まさせる為にも徹底的瞬間を待てってことか、有だな」
「でも調子乗る前に対処しないと…また面倒事が起きるわよ?」
「…エリスが来たの?…」
『はい…何か嫌な事言って帰っていきました…』
「変に借りを作るよりは帰ってくれた方がマシよ…借りを作ったら面倒事が始まるから…うぅ」
『安静にしてくだしゃい!ダメでしゅ…』
「ありがとう、エリスが来ても…吠えなかったのね、良い判断よ…」
シルヴァが目を覚ましたユリアスに近付くと頭を撫でられた。まだ辛いようで自分に回復魔法をかける事も出来ない…
シルヴァはエルネストからの贈り物を探していたが、どこにも見つからなかった。床、ベットの下、クローゼットの中、テーブルの裏、椅子の裏など隅々まで見たがどこにも無い。
床を小さな爪でカリカリしてみるが駄目だった。
気になるとしたら…監視達の死角になる所…部屋の壁だ。
しかし小さなシルヴァでは届かない…ぴょんぴょん跳ねてみるが届かない…可愛いすぎる光景にアリサとメイリーンの笑い声が聞こえた。
「ちょっとシルヴァちゃん、可愛すぎ…」
「笑わせないでよ…フフッ」
『届かないでしゅ~!』
そこは監視達が後で調べてくれるそうだ。
ーーーーー
…それから3日後、やっと身体が動くようになり、自身に回復魔法をかける事が出来た。回復したのでこれでまた色々出来る。
「はぁ…まさか1週間も寝込むとは自分でも思ってなかったわ。迷惑をかけたわね」
「気にしないでくれ王女殿、医師はあと少し長引いてたら大変だったと言っていた」
「もっと大変な状態になってた…ならなくてよかったわ」
「全くです、何かに追われてるようですが、落ち着いて行動するべきです」
「頭に入れとく、それで、皇子殿下が置いていったモノは見つかったの?」
ユリアスがそう言うとジョシュアが現れた。
彼の手には手紙が…これが目的の物だろう。
「何処にあったの?」
「壁の扉で隠れる部分。全員の死角になってたから誰も気付かなかったんだ。しかも壁と同じ色にしてるから見つけにくかった」
「…よっぽど誰にも見られたくないモノだったと」
そう言いながらペーパーナイフで開けて読んでみると…
…エルネストから新たな作戦を思い付いたと書かれていた。
何でも近い内にエルネストが帝国の各地を視察しに行くようで、最短でも1ヵ月、最長で3ヵ月かかる仕事のようだ。
エルネストの耳にも神殿跡地の調査が終わりそうとは入ってるが、何やらエリスが拒んでるようで滞在が長引きそうだとの事…これを利用してみないかとの事だ。
シルヴァを連れてきても良いが、誰にも言わずにこの日のこの場所に来ること…と書かれていた。
「……」
「何て書かれてたんだ?」
ジョシュアが顔を近付けて来たが…避けて説明した。
「ちょっとした事よ、近い内話さないかって誘いよ」
「ホントかよ~」
「……」
ユリアスはジョシュアを睨んだが、当の本人は笑いながら近付けて耳元で話しかけてきた。
「オレはエルネスト側の人間だ、オレにだけ話してよ」
「!?」
「オレの主はエルネスト皇子だ、彼の指示で皇太子の部下に紛れてるんだ」
「彼らは知ってるの?」
「知らない。皇太子は気付いてるかもしれないが…皇太子の専属護衛兼部下はケイオス含めて6人、その内のオレだけはエルネスト皇子の部下で、内通者みたいな役割を任されてる。スパイじゃないぞ」
「……内通者もスパイも同じじゃ…」
「似てるけど全然違う。とにかくオレはエルネスト皇子の部下だ、話せば上手く動けるよう手配しとくぜ」
「胡散臭いわね…」
「信じてくれよ~」
確かに…よく見ればエルネストが連れてる騎士と顔が似ている。
もしや…
「ねぇ、皇子殿下の騎士とアナタって」
「『ヨシュア』の事だろ?オレとアイツは双子の兄弟だ、これで納得してくれる?」
「あぁ…なるほど…一応…(皇子の部下って事は本当みたいね)でも教えられないわ」
「チェッ なんだよ~」
「ジョシュア、彼女に何を吹き込んでる、変な事をするな」
「変な事じゃねぇ~し」
…エルネストへの返事は既に決まってる、参加するに決まってる!それ以外無い!
これが上手く行けばユリアスが自由になるためのリーチが掛かる!
何としてでもエリスにアルベリクを落としてもらおう!
病み上がりなのに何かに対して張り切るユリアスを見て監視達は動揺していた…。
エルネストの部下でありながらもアルベリクの部下に紛れてるジョシュアだが…
彼がホントに上手く動いてくれるかはわからない…だが、エルネストが信用してるから紛れさせた、つまり彼にも手紙の内容は一応知らされてるはずだ…
信じて良いのか…様子を見た方が良いのか…
視察に行くのは来週、出発時間は午前8時、集合場所は城の裏口…覚えておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます