6.エリスの恋 1
それから3日後
今日から聖女エリスと神殿の者達が皇城に滞在する事になってる。何時帰るのかは不明…
ユリアスは部屋の中で大人しくしていた。
シルヴァが窓から外を見ながら話しかけてきた。
『神殿の人達は何をしてるのでしゅか?』
「近くにある神殿跡地の調査みたいよ。何でも聖女と深く関係してるとかどうとか…」
『何時帰るのでしゅか?』
「調査次第ね、わからないわ」
『うぅっ…ボク、なんか嫌でしゅ…』
「そうね、気を遣うのは疲れるものね…おいで」
『!!』
元気がないシルヴァを抱き締めるユリアス、3日前の事を思い出していた。
☆★☆★☆★
「3日後、聖女エリスが神殿の人間と共に城に来る。近くにある神殿跡地の調査をするために皇城を拠点とする」
「何故城を?」
「城に調査関係者が何人もいてね、兄上も参加してる一人だ。僕は違うけど」
「…なら好機じゃ…」
「そう、2人の仲を進展させるには絶好のチャンス。今回の調査に兄上が参加するかはわからない、今までは協力してたからね…今回はわからないや」
「……」
戦争を防ぐ為にもエリスとアルベリクが恋仲になってもらわなくては…
ユリアスが黙って国を出ていけば解決すると思うが…完全には解決しないだろう。
ミアに隙を与えない為にも2人の仲が結ばれなくては…
ミアに隙を与えたら全てが終わる…ミアが戦争を起こせば彼女の味方になってる国全てが手を組んでしまったら、いくら最強の戦力を持つカリブルスでも簡単に滅んでしまう…
姉に嫌がらせをしたいが為だけに戦争を起こそうとするとは…
ホントに性格が悪すぎる…あぁ嫌な嗤い声が聞こえてくる…幻聴にも程があるだろ
…とにかく2人の仲を進展させ、邪魔しないようにしなくては…
「(とにかく戦争は最終手段だと思うから…慌てずミアの攻撃を防ぐ方法を考えてみよう…)」
「……」
複雑な立場のはずが、嫉妬せず見守る事を選択をする者がいるだろうか…
自由になりたいユリアスを複雑な思いで見るエルネストだった。
☆★☆★
そして現在
珍しくナソスがご機嫌な様子で部屋に入ってきた。
何でも…エリスと神殿の調査にアルベリクも参加するとの事、仲睦まじい2人を見られるとウキウキしてるようだ。
言うだけ言って部屋を出ようとした時、2人の邪魔をしたらどうなるかわかってるな?と脅してきたのだった。
邪魔する気は一切ないと伝えると納得してない顔をして出て行った。
邪魔しないと即答したのが面白くなかったのだろう。
エリスが滞在してる事で使用人や騎士達の目が何時もより痛い。
ただ図書室に向かうだけでも睨まれてしまう…
何故居るのだ、出てくるな、邪魔をするなと言ってるようだ…。
『周りの目がいつもより怖いでしゅ…』
「ピリピリしてるね…大人しくしてれば大丈夫よ…多分…」
『ユリアスさまぁ…』
「(慣れてるとは言え、ピリピリし過ぎてて色々怖いわ…)」
最悪なのかはわからないが…何時もいる監視の数が少ない。
ダンもいなければアリサ、ジョシュアもいない。居るのはロイとメイリーンの2人だけ…多分いない3人はアルベリクの元にいるのだろう。
元々自分は客人ですらない…護衛ではなく監視対象なのだ。
変な行動をすれば直ぐ様報告される…
とにかく本を選んだらすぐに部屋に戻ろう…
そう思っていたのに…
「なっ、何故貴方が此処に…」
「(最悪だ…何でいるんだよ…)ごきげんよう、聖女エリス様」
調査に行ってるんじゃなかったのかと思うが変な態度を取ると面倒だ…我慢しよう。
「どうして此処にいるんですか?」
「(そういえば…何でだろう。いくら婚約するとは言え、ずっと滞在する必要は無かったわね…後で色々調べてみよう)申し訳ございません。すぐに去ります」
「…どうしてまだ国に居るのですか?本当にアルベリク様とご結婚なさるのですか?」
「(説明するのが難しいなぁ…どうすれば簡単に言えるかなぁ…)えっと…色々ありまして…」
「色々って何ですか」
「それは…(面倒くさいよー!あっちは完全に敵と見てるから変な事言えないよ…)婚約を遅くしました」
「何時ですか?」
「えっと…(誰にも言うなとは言われてないから…言っても良いよね)十一の月に婚約証書を書きます」
「婚約証書…正式な婚約書ではなく簡単に破局が出来る書類でしたね…契約書と言うべきでしたか…十一の月…まだワタシにもチャンスがある…」
ブツブツと呟きながらユリアスを睨み付けるエリス…
やめてくれ、敵になるつもりは無い。話せばわかるはずだ…
話せばわかる…一か八かやってみるか…
「せ、聖女エリス様っ!お話があります。お時間をいただけませんか?」
「嫌です。忙しいので」
「(ですよね~)」
「貴方とはお話したくありません。ですが、条件付きなら良いですよ」
「条件?」
エリスは勝ち誇った顔をして言った。
「アルベリク様に近付かない、ワタシの邪魔をしない、ワタシの言うことを絶対に聞く、この3つを守ってくれるのなら話を聞きますよ」
「…(緩すぎない?随分簡単なお願いね…)」
何処かの愛され王女と似た事を言ってるが…全然可愛く感じる。緩い条件、お安い御用だ
「わかりました。従います」
「そ、そうですか…では…」
エリスは手元にある懐中時計を見て時間を確認した。恐らくあんな事を言ったが暇なのだろう。
「では此処で15分だけですが話を聞いてあげます」
「ありがとうございます(流石未来の皇太子妃だわ…格が違う…)」
「(何なのこの王女様!?話と全然違うじゃない!いや、演技なのかもしれない…油断したらダメよ)」
聖女が他国の王女にあーだこーだ命じるとか…
色々心配もあるが大丈夫だろう。
図書室の隅の席に座って話を始めた。
シルヴァをギュッと抱き締めながら…エリスの圧に負けそうになりながらも口を開いた。
「お時間を作っていただきありがとうご「さっさと本題をお願いします」…はい」
『ユリアスさまぁ…大丈夫ですか?』
「ミアの相手よりマシだわ…大丈夫よ」
そうだ、相手はミアじゃない。まだ話が通じる相手だ…怖くない、怯むな。
「私は聖女エリス様こそ皇太子妃に相応しいと思っております。私は…皇太子妃にはなりません」
「悪女だからですか?」
「いえ、私は皇太子殿下と結婚も婚約もしません」
「えっ!?本当ですか!?」
嬉しそうな反応をするエリス、アルベリクが好きなのは事実でミアのような裏は無さそうだ。
「ですが…お願いがあるのです」
「嫌ですが?」
「皇太子殿下と結ばれていただけませんか?」
「何で貴方の言うことを聞かなきゃいけないのですか?言われなくても結ばれます」
「(凄い自信ね、これは利用させてもらおう)それが聞けて満足です。
私はお二人が婚約したら国を出ていくつもりです」
「本当ですか?」
「はい」
皇太子妃になる為に頑張ってきた彼女の努力を無駄にはさせない。
此処は部外者が速やかに立ち去るべき
「(言われなくても邪魔はしないさ、周りは彼女なら認める。
フィリスタルは勝手に滅ぶと思うけど、問題なのはミアが何時戦争を起こしてくるかなのよね…。一番良いのは起きる前に滅んでくれる事なのよね…先にこちらが仕掛けて滅ぼすのも全然有りなんだけどね~)」
「そ、それで、話ってこれだけですか?」
「はい。これだけです」
「そうですか…なら、さっきの条件も従ってくれるって事ですよね」
「はい」
「そうですか、わかりました。では遠慮なくアルベリク様の隣をいただきます。邪魔、絶対にしないでくださいね?」
「はい。邪魔しません」
「ではこれで失礼させていただぎす」
「ありがとうございました」
ご機嫌な様子で図書室を出て行ったエリス、なんとか上手く行った。
これで準備完了だ。エリスが本気でアルベリクを落としにかかったから…こちらもミアへの対策に専念しよう。
…しかしこれが…帝国を混乱させる大問題の始まりだった。
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