刺客に罰を 2
「な、何で!?いつの間に!」
「いつの間に?失礼ね、私は最初から居たわ」
「えっ!?」
「私が居る事に気付かずに話を始めてくれたから、二度目の説明は不要よ。全部聞いてたから」
「あっ…」
顔を青くして彼女を見る第二王子、ユリアスが姿を消した状態で部屋に居るとは思って無かったようだ。
既に扉と窓の鍵は魔法で使えなくしてある。逃げようとしても無駄だ、情報を根こそぎ奪ってやる
ユリアスは第二王子を見て話を続けた。手には…いかがわしい事をする娼婦の写真
「貴方、私がミアと双子って事を忘れてない?」
「っ!!」
「この写真の女性、何処をどうみても同い年の娘には見えないわよね?年上よ…黒髪の娼婦を雇って鱗のようなメイクをさせて撮らせたんでしょうね」
「で、でも!鱗は顔にある!」
「そう、あったわ。顔の右側にね」
「!!!」
正論に狼狽えるが…この男の負けは確定だ。何を言っても無駄、姿が変わっても彼女は鱗を持ってたユリアス王女だから。
「今は色々あって顔の鱗は失くなったけど、まだ身体にはあるのよ。
浅はかだったわね、娼婦の身体にも鱗の模様を書かなかったから、どうみても捏造確定ね」
「そ、そんなバカな!じゃあ!この写真は!」
「ミアが探偵経験のある写真家を雇ったのは事実、でも娼婦を雇ったのは彼女じゃない。
彼女を慕う者が用意した似ても居ない娼婦、顔に鱗のようなメイクをさせれば誰が見てもユリアス王女だと思うように…
でも、その者は貴方と同じように私とミアが双子の姉妹だって事を忘れてた。
姿を見てなかった時間が長かったのが仇となったのか、私を(年上の)姉だと思ってたのかもね」
「……」
「そんな……」
第二王子は膝から崩れ落ちた。
真偽のはっきりしてない情報を鵜呑みし、ミアに良いように使われたと知った…
色々思うような事が有るだろうが、逃がしはしない。
「さて、貴方にはまだまだ情報を吐いてもらうわ。
私のあだ名は良いとして、この写真の事を全て話してちょうだい」
「し、知らないんだ!本当に!この写真はユリミア様から送られて来たんだ!
写真と共に、ユリアス王女が花街で男と密会してる。これを帝国に見せてきてくれと書かれて実行しただけなんだ!」
「この場所は本当に帝国なの?」
「わからない…本当に帝国なのかもわからない、自分は手紙を読んだだけなんだ…」
「馬鹿ね…捏造だらけのモノを信じ来んで実行したなんて」
「……」
アルベリクは写真をもう一度見た、今度は男女ではなく周りを隅々まで見た…が…答えはすぐ出た。
「この場所はカリブルス帝国じゃない」
「えっ!?」
「……」
「恐らく別の帝国で撮らせたのだろう。近くに良い意味でも悪い意味でも華やかな帝国が存在する。
ユリミア王女と共犯者が写真家と娼婦にどう指示したのかはわからないが、間違いなく此処ではない」
「手紙にはどう書かれてたの?その手紙はあるの?」
「手紙は…自分がこの国に入った瞬間に燃えてしまったんだ…」
「内容は覚えてるわよね?愛しのミアの手紙だもの、忘れてないわよね?」
「ひっ…お、覚えてます!
『お姉様が心配だから探偵経験のある写真家に依頼したら、帝国でこのような写真が撮れました。これは帝国にも大問題になります。
直ぐ様写真を持って帝国に行って皇族に説明してください』
…っ!確かにカリブルス帝国とは一度も書かれてなかった…」
「嫌な手口ね…」
「風評被害にも程がある…」
「……」
今回の事以外にも情報を持ってるはずだ。簡単に帰しては行けない
ユリアスはアルベリクに帰らせるなと説明して…第二王子を牢屋に連れていかせた。
彼は抵抗する事なく、大人しく従ったのだった。
何とか事が落ち着いたが…問題が増えてしまった。
まさかミアが最悪なやり方でユリアスの居場所を奪おうとするとは…
しかしミアに協力している共犯者のミスもあってか失敗に終わった…が、これで終わらないだろう。
ミアの目的はユリアスの居場所を徹底的に奪う事、対するユリアスは自由になる事…自由になればミアの攻撃を受ける事はない。
このまま帝国に残っていたら…攻撃は続くだけだ…。
なんとなく…察してしまった…
ミアはユリアスの居場所を奪う為だけに戦争を起こすつもりなのだ…戦争も嫌がらせに過ぎないのだ…
仮に、もしミアが交渉通りカリブルス帝国に嫁いだとしても…アルベリクはミアの言葉を鵜呑みし、そのままフィリスタル王国に戦争を仕掛けていたかもしれない。
「(色々マズイ事になったわね…皇太子がミアと結婚してたら…今頃大変な事になってたわ、本当…平和に解決する方法は…本当に聖女エリスと皇太子が結婚する事だわ。
私の存在が消えれば帝国はミアの攻撃を受ける事ない…
ホント色々マズイわ…早く事を進めなきゃ…)」
「ユリアス王女?」
ユリアスは立ち上がって部屋を出ようとした。その表情は…何処か焦ってるようにも見える。
アルベリクが彼女の手を掴んで呼び止めたが、大丈夫、ありがとうとだけ言って出て行った。
話したい事はあった。でも…申し訳ないが今はそれ所じゃない…今すぐエルネストと話さなくては。
アリサに預けていたシルヴァを受け取り、彼女にエルネストと話したいと伝えるとすぐに動いてくれた。ロイは何が狙いだと疑ってるようだったが…説明してる時間はない…
ミアの次の攻撃が来るまえに…すぐに動かなくては…
ミアはユリアスに嫌がらせの為だけに戦争を起こすはずだ…いつ王国が仕掛けてくるかわからない中、ジッとしていたら次の攻撃、刺客が来るだけだ。
アリサがエルネストの居場所を教えてくれたのでそこに向かった。
アリサから話を聞いたエルネストも動かずそこに待ってるようだった。
☆★☆★☆
一方…取り残されたアルベリクは一人ソファーに座っていた。ミアが用意した悪意ある写真がテーブルに広がってる…
しばらくするとケイオスがやって来た。何があったのか簡単に説明したが…その後の彼女の行動がおかしかった事も話した。
何処か焦ってるような…何かに追われてるかのような
写真の件を気にしてるようには見えなかった…
「(項垂れてる場合じゃない、余計なお世話だと思われても良い。俺が今出来る事をしよう…)」
「アルベリク様…難しく考える必要は無いのでは…」
「そうかもしれない、だが…やらかした事の後始末は俺がやらなきゃダメだ」
「しかし…」
「信用、信頼を得られなくても良い…だが、心残りは作りたくない。やらないと一生後悔するかもしれないからな…」
「……」
彼も何かあったのか…思い詰めた
未だに残る忌々しい記憶と失態…
消したくても消せない…
発言の撤回なんて自分勝手過ぎる…
誰よりも早く事の恐ろしさに気付いて動き出した彼女の邪魔をしてはいけない、今自分に出来るのはこの写真を解決させる事だ。
写真家、娼婦、そして雇い主を徹底的に調べなくては…
アルベリクはケイオスに部下を呼ぶよう指示した。
覚悟が決まったアルベリク…残酷な未来が待っていたとしても…受け入れなくてはいけない…
自分がしたことは許されないのだから…
☆★☆★
一室にエルネストとユリアスが居た。
「何かあったみたいだけど、事は解決したの?」
「一時的に、しかし解決はしてません。雇われ者を捕まえたに過ぎませんからね…同時に国を揺るがす大事が起きる事もわかりました」
「…ベルティナ王国の第二王子が来たんだよね、ベルティナはユリミア王女を崇拝する異教徒の国とも呼ばれてるからね…アンタが察した事、なんとなくわかったよ」
流石同志だ、同じ答えに辿り着いたようだ…
「ミアは戦争を起こす気です…私への嫌がらせに過ぎないですが、絶対に仕掛けてきます」
「やっぱりか……嫌がらせで戦争を起こすとか、愛され王女に甘すぎない?ヤバいでしょ」
「あの国は誰も彼女が可笑しいとは思ってないのですよ…訴えても無駄ですから…」
「君も苦労したんだね…それで、何かわかったから来たんでしょ?兄上の部下に呼ばれたから何事かと思ったけど…」
「それは申し訳ございません。ですが、急がないと取り返しの付かない事が起きる気がしたんです…」
「なるほど…話してくれる?」
ミアの危険性を理解し、聖女エリスこそ皇太子に相応しいと言いあえる2人の事だ…もうわかるだろう…。
「今すぐ聖女エリス様を皇太子妃にしないとマズイ事になります!」
「戦争を防ぐ為?」
「それもありますが、私が消えない限りミアの攻撃は続きます!今回は刺客で済みましたが、今度は国民に被害が出るような事をしてくるかもしれません!」
「……」
あのミアの事だ、絶対にあり得る…下手したら国民を利用して帝国を滅ぼそうとしてくるかもしれない…
「ミアは姿が無くても執筆だけでも人々を魅了します。
もし彼女が私を悪女だから気を付けろとか書いたモノを国民に広げたら…大変な事になります…」
「兄上みたいに手紙を読んだだけで虜になっちゃうヤツが起きちゃうって事か。国の中から壊そうって訳か…一番手っ取り早いのは全ての元凶を消し去る事じゃなくて?」
「それが出来たら苦労してません」
「だよね…彼女の味方はフィリスタルだけじゃなくて至る所にいるからね…簡単には出来ないのか」
ユリアスが出来なくてもミアには簡単には出来る事が多い…しかしユリアスが命を落としてしまったらミアの娯楽が消えてしまう、だからユリアスの命を奪うような指示を出してないのだ。
彼女の心を傷付けるような事をしてこいと…
その後、今後の作戦について話し合い、周りに怪しまれる前に別れた。
ミアが仕掛けてくるとわかってても対策が出来ない…ユリアス一人が狙われていても、帝国が巻き込まれるのだけは絶対に防がなくては…
帝国が滅んでしまったら自由になれないから…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます