嵐の予兆 2
「えっと…こちらは?」
「ここは欲しいものが何でも手に入れられる店だ。
家具や衣服、アクセサリー…雑貨等の細かいモノもこの建物の中に全てある」
つまり一つの建物の中に沢山の店があり、あらゆるジャンルのモノがあるとの事。
また庶民から貴族など、爵位関係なく入店出来るようだ。
貴族はユリアスとアルベリクを見てヒソヒソと話していた。主に見られているのはユリアスだ。
白いブラウスと黒いスカートのシンプルな格好は清楚に見える、しかし貧相にも見えてしまい…どうも高貴には見えない。
皇族とは明かしていないが、すれ違う人々はユリアスの隣にいるアルベリクが皇太子だと気付いてるのか近寄って来ない。
貴族も同じだった、本当は近付きたいが…社交界ではないので無礼な行動は控えなくてはいけない。
中に入って色々見たが、目が奪われたのは服屋だった。
ドレスやワンピースだけでなく、今彼女が着てるような服等も売られていた。更には動きやすそうな服も…理想の店だ。
「わぁ…」
「好きなのを買って良い、監視の女性達…アリサともう一人から聞いたんだ。ドレスが無いと…」
「お恥ずかしいですね、ですが私は滅多にドレスを着ないので2、3着あれば十分なんですが…」
「…(ハッ!警戒は解けたが仲よくなった訳でもないのに服屋に来て色々言うのは我ながらキモすぎないか!?)や、やっぱり無理して買わなくても良いぞ、店の位置がわかれば自分で買えに来れるだろ?」
「…(確かにそうね。色々気を遣ってくれてるみたいだし、仲を築く気はないし…今回は見るだけにさせてもらおう)そうですね。今回は見るだけにします。また来ようと思います」
「そうか…(気持ち悪がられてない…よな?)」
「…正しい判断なのかしら」
「そうだな、婚約者になら神対応だが、2人は婚約をしてないから…異常な行動だと思われるかもな…お互いに」
ロイの言う通り、2人は婚約してない。
本来帝都を巡るのは婚約してからならわかるが…アルベリクは仲良くなりたいが為に誘ったのだろう。
ユリアスが彼に引いてる様子が無いのが救いだ、喜ぶべきか悲しむべきか、意識すらされてない…彼女と信頼を築くのはかなり難しくい…
忘れたくても消せない過去の過ち…ミアの情報を鵜呑みし、ユリアス本人に結婚しない!と言った…更にはクルシュが話す機会を作ってくれたが…ユリアスから言われた同じ気持ちだと、自分も結婚する気はないと言われた事…
あんな事を言われて当然なのだ…先に言ったのは自分…今になって後悔している…
意識すらされてなくて当然なのだ…
それでも楽しんでくれて良かったと思うアルベリクだった。ユリアスだけじゃない、シルヴァも様々なモノに目を輝かせ、尻尾を大きく振って喜んでいた。
その後、皇城に帰った。
しかし…この後…誰も予想出来ない事態が起きるであった。
★☆★☆
同時刻…ケイオスの指揮でダン達…アルベリクの護衛兼監視達は城内を走り回っていた。
「まだ見つからないのか?」
「すまないケイオス、かなり厄介だ」
「こっちも同じでした…」
「クソッ!証拠が何処にも無ぇ!」
ケイオスの元にダン、『メイリーン』、『ジョシュア』が集まった。
彼らは今…ユリアスの食事を作ってる料理人を探していた。しかし…料理人達は誰もやってないと言い、ユリアスの食事に必ず使われてる腐った食材も見つからないのだ。
侍女頭ナソスが余計な事をしたせいでエリスを推す使用人や騎士達が無礼を働き…王女であるユリアスに嫌がらせをする…
嫌がらせは何とかなりそうだが、厄介な食事の件が解決してない。
彼女に使われるのは…必ず一人で食事をする時だけ、アルベリクと食事をする時は使われてない。明らかに…誰かが手を引いてる…でも何も見つからない。
アルベリクが監視達の報告でユリアスに腐った食材が使われた食事が提供されてる事を知った時は血相を変えていた。
最初はミアの偽りの情報を鵜呑みしていたので嫌がらせを受けて当然、自業自得だと思っていたが、現実を見た今は違う…
どうして野放しにしてしまったのか…犯人に時間を与えすぎてしまった…
…完全にアルベリクのミスだ、かつての彼に乗っかって止めるよう言わなかったケイオスのミスでもある…
色々遅ぎだ…今日まで彼女に何の症状が出てないのが奇跡だ。食中毒になってても可笑しくない…
「っ…これは自分の責任だ。今になって事態の深刻さを理解し…手詰まってしまった」
「っ……」
「後悔しても仕方がねぇよ!オレらは何としてでも犯人を捕まえる」
「そうね…ん?なんか走ってない?」
「あ?…あぁ、こっちに来てるのもいるな」
メイリーンが見たのは外でバタバタと慌ててる使用人達だ。何かあったのだろう…
慌てる使用人がケイオス達の前に現れた。
「ケ、ケイオス様!大変です!」
「どうした?何があった?」
「べ、『ベルティナ王国』の第二王子が突然来訪しに来たのです!なんでも、フィリスタルのユリアス王女の事で話があると…」
「「はぁ!?!」」
「よりによって忙しい時に…」
「慌てても意味がありません。今王女様はアルベリク様と共にいます。あと少しすれば帰ってくると思います…ケイオス様、指示を」
「っ…お前達は捜索を続けろ、自分がそっちに行く」
「ありがとうございますっ!こちらです!」
「頼んだぞ」
「「「ハッ!」」」
「(何故ベルティナ王国の人間が…あそこは国の人間全員がユリミア王女を崇拝してる国だぞ…)」
…最悪だ…このタイミングでミアの刺客が現れるとは…
これがミアの思い付いた事なのだろうか…なんだか胸騒ぎがする…
…このまま終わる気がしない……
数分後、馬車の中で報告を聞いたのか慌てた様子で2人が帰ってきた。
ユリアスは真剣な表情をしてシルヴァを抱き締めた。しかし心は落ち着いていた。
来訪した人間を聞いて…冷静になったと言うべきか…
…ミアが何かしらしてくると…予想はしていた…
やはり敵は無礼な使用人達じゃない…双子の妹のミアだ…。
愛され王女の刺客には負けないさ、むしろ利用してやる。
これまでそうしてきたのだから、今回もやってやる…
ミアの刺客など怖くない、罵倒されるのも…嫌われるのは…もう慣れた。
この身で、この力で、この才能で返り討ちにしてやる!
しかし、簡単に姿を見せるのは面白くない。
此処は…ちょっと細工をして、相手を驚かせてやろう。
余裕そうな表情をする彼女を見て驚くアルベリク、でも彼女の武勇伝を聞いた事もあって…不思議と不安を感じなかった。全くという訳ではないが…思っていたよりも彼も落ち着いてた
そして2人は…ミアの刺客が待つ
ーーーー
ベルティナ王国はフィリスタル王国のミアを女神のような存在と見て国民全員が崇拝している。
まさにミアの為の国だ、ミアの味方しかいない…嫌~な国。
他国の姫に夢中になる国など…気持ち悪い。
女性も子供も…会ったことのない愛され王女に夢中になってる。何故崇拝してるのかわかってない国民もいたが…崇拝しないといけない存在だと思ってるのだ。
ミアの頼みなら何でもするベルティナの王族…良いカモだ…。財布と言ってもいいか…
…もうわかる通り、ミアを崇拝してるのなら…ユリアスを悪しき存在と見ているのだ。
ユリアスは魔女だ、ユリアスは女神ミアの敵だ…ユリアスを殺せ…
ミアの洗脳が全員に掛けられてる…悪評を真実だと思ってる…
実際はミアがやった事をユリアスがやったと偽造してるのだが、そんなの知ったこっちゃない。
ミアの言うことは正しい、絶対なのだ…
だから…
…だからユリアスが刺客に負けた事がないのだ。
隙だらけでチョロい、【最悪な状況】が彼女の武器になる。
だって、彼らは知らないのだ…
嫌われ王女が色々強すぎる事を
…静かで恐ろしい嵐が起きる予感…
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