12.白龍の祝福と…1
ユリアスと同じ翡翠の髪と金色の瞳をした背の高い男がシルヴァを抱き上げて彼女に渡した。
「色々混乱してるようだな、まずは中で話そう」
「へ?」
「?!?」
「…アヤツと繋がりを持つ者か、部外者は入れたくないが仕方がない、貴様も入れ」
「あ、あぁ…(部外者…確かにそうだな)」
男の後を着いていき、ユリアス達は神殿のような建物に入って行った。
ーーーーー
神殿の中には様々な彫刻、植物、そして精霊たちが飛んでいた。
ユリアス達を見た彼らの可愛い声が聞こえてきた。
『おちびちゃん帰ってきた~ 長い遠足でちたね~』
『遠足じゃないでしゅ!大変だったんでしゅ!!』
『ちゃんとお姫様連れてきたんだね~偉い偉い』
『赤ちゃんじゃないでしゅ!!』
精霊達に向かってきゃんきゃん吠える子ギツネ、先輩の精霊達から良い意味でも悪い意味でも可愛がられてるようだ。
確かシルヴァは生まれたばかりの精霊だと言っていた。
生まれたばかりではあるが、しっかりと動けるようになってからユリアスの元に向かわせたのだろう。
精霊の本当の姿はこのような動物ではなく、光の粒とか言われてる。あくまでも子ギツネは借りの肉体って事だ。
もし初めて頭の中で会話をした時が借りの体をもらったばかりの頃だったら…来るまでに時間がかかった辻褄が合う。
そんな事を考えてる間に目的の部屋に着いた。
椅子に座るよう言われた。
2人が席に着くと男は話を始めた。
「良くきてくれた、
「お会い出来て光栄です。ユリアス=フィリスタルです」
「アルベリク=カリブルスだ…」
クレイの声は間違いなくあの時の声だ…本当に彼が鱗の持ち主のようだ。
「…気になることが多いのだろう。鱗も力も、そして髪や瞳も…全て話そう」
「……」
クレイは本当に全てを話してくれた。
「妖精が赤子に悪戯をするように、我々も赤子に【祝福】を与える事がある。
しかし妖精の悪戯と違い、与えるタイミングは異なる。
我々は生まれる直前の赤子に与えるのだ、生まれる前の人間にな。お前が王族と異なる色をしたのはコレが理由だ」
「ですが…私は黒髪でした…浄化の炎を受けたら翡翠の髪になったのです」
「本来は翡翠の髪だ。本来…吾の祝福を受けたお前はその髪色で生まれてくるはずだった」
「!!…」
「…本来はと言うからに…何かあったのか」
「部外者は黙っていろ。この場に居させるだけ有り難いと思え」
「っ…」
あのアルベリクがクレイの冷たい言葉と凄まじい圧に負けるとは…ざまぁみろ
「部外者の言う通り…ある問題が起きた」
「問題?私が胎内にいる時にですか?」
「そうだ。吾がお前に祝福を与えて去ろうとした時…黒い蝶が現れ片割れに接触した」
「黒い蝶…片割れって…」
『ユリアスさまの妹君でしゅね』
「あぁ、お前に悪態を擦り付ける女だ。
問題なのはその後だ。
黒い蝶が接触した途端、片割れはお前の命を吸い取り…いや、存在を消そうとし始めた」
「っ!!」
「!?」
とんでもない発言だった…それだけじゃない。
「吾は引き返してお前に鱗を与えた。鱗によって片割れの吸収は止まったが、おぞましい力が胎内に広がり…2人を呑み込んだ。
母体には影響がない為、気付かなかったのだろう。
そしてしばらくすると力は消えた…が」
「……私は黒い髪をしていたと」
「いや…それだけじゃなかった」
「??」
クレイは言いにくそうだったが…続けた。
「お前の身体に…黒い鎖が絡み付いていた」
「えっ…」
『黒い鎖?魔物が持つヤツでしゅか?』
「恐らくな…」
「!?」
王国にいた時に身体にあった怠さの原因かもしれない、体調に影響があるのではなく、魔法の威力を減らすヤツだろう…帝国で威力が増えたのも…力を封じられていたからだ。
「幸い全身に吾の鱗があったおかげで鎖に打ち勝てたが、一部は防げなかった」
「力…クレイ様の力に制御をかけられたのですね」
「そうだ、吾が与えた祝福…吾の力の一部が封じられてしまったのだ」
「っ……」
そしてユリアスが黒い髪に全身に鱗を持って生まれたと…。
最初は力…クレイの祝福だけだったようだが、良からぬ事態が発生した為、悪しき存在から身を守れる神秘の存在の鱗を与えられたと言う事だった。
黒い蝶…魔物が使う黒い鎖…そして接触された片割れ…
コレがミアが持つ凄まじい影響力、魅了する力の正体なのかはわからない…が、関係してるのは間違いない。
目の前で起きた事を知ってる者がいるのだから…
「黒い蝶は魔物なのですか?」
「…魔物とは限らない。魔族や…寝返った同胞達によるモノかもしれん…」
『でも悪しき存在が絡んでるのは間違いないのでしゅね…』
「(とんでもない話を聞いてしまった…)」
しかし思うことがあった。
「祝福を受けると髪や瞳の色が変わるのですよね…。でも、蝶と接触してしまったのにミアは…王家の証を得ていましたが」
「金髪に青い瞳、そこは妙だな…悪しき存在の力を得る場合も祝福と同じと言われている。しかしあの者は変わってなかったな…」
「存在にではなく、何かに影響を与えたのだろう。口を開いて申し訳ないが、その件について心当たりがあるから言わせてもらった」
「何だと?」
それでも気に食わないクレイだったが、渋々許可を与えたのだった。
許可を貰ったアルベリクは皇族について話した。
「皇族は皆、炎の龍神【エンブレアス】の力と血を宿している。初代が彼と接触し、鱗ではなく血と力を貰ったそうだ。その為、初代は赤い髪に金色の瞳をしていたが…今では黒い髪に赤い瞳をした皇族が多い…」
「フンッ、プライドが高いヤツの事だ。最低限の祝福しか与えなかったのだろう」
「へ?…」
この発言を聞いたアルベリクはショックを受けてしまった。
「良いか小僧、神秘の存在による真の祝福と言うのは、力だけでなく神秘の存在の部位を与えられる事だ。血と力なんぞ誰にでも出来るぞ」
「は…はぁ?!」
「初代の代から結構経ったのだろう、後継され続けるが効果は薄くなるに決まってる。
ドラゴンなら鱗か肉でも与えない限り長い効果は得られないぞ」
「そ…そんなバカな…」
「何が炎の龍神だ。アヤツはプライドが高いだけの
人間にとって、ドラゴンから力と血を与えられる事だけは幸せな事とされてるが、我々にとってはザコの力を与えられて何が嬉しいんだと思うぞ」
「ザ…ザコ…エンブレアスが雑魚のはずが…」
その時だった…
『これ以上はやめてくれ翡翠の古龍様!!確かにあの頃の自分は己の力を過信しすぎてた!恥ずかしい過去を思い出させないでくれ!』
「「!?!?」」
赤いドラゴンが現れクレイのように人の姿になって現れた。
「フンッ何を今更、お前の力を受け取った者の末裔が目の前にいるぞ」
「えっ!?アイツの末裔!?ってスゲェー恥ずかしい姿を見せちまったな…」
「エ、エンブレアス…なのか?」
「あぁ、えっと…炎の龍神【エンブレアス】だ。…チクショウ!何でよりによって古龍様とアイツの末裔の前で黒歴史を掘り起こさねぇとならないんだ!恥ずかしいすぎるだろ!」
ドラゴンにもヤンチャな時期があるみたいだ。
自分達が信仰していた龍神が…こんなドラゴンだったとは思わないだろう…。
確かに炎の龍神を名乗るのに相応しい身体や迫力はある。
しかし…どうやらヤンチャな時期に初代皇帝と出会って血と力を与えたそうだ。
後にクレイに「それは祝福とは言わない」ときっぱりと言われてしまったらしい…
ドラゴンにも黒歴史はあるみたい。なんか可愛いな
衝撃の事実を知ったアルベリクは…項垂れた。
ユリアスの鱗を侮辱する価値は自分達には無かったのだ…
自分達以上の存在相手に何て事を…
後悔しても遅い、自分がやったことはどれも許される事じゃない。
真の祝福を得てるユリアスは皇族以上な存在だ。最低限の祝福を与えられた皇族よりも強い…
ーーー
アルベリクはエンブレアスと共に外に出て話をした。
残ったユリアスとクレイ、シルヴァは話を再開させた。
「邪魔者が入ったが、話を戻そう。小僧の言っていた事は一理あるな、存在ではなく何かに強い力が与えられたのだろう。だから王家の証を持った状態で生まれたのだ」
「…存在ではなく何かに…(それが人々を虜にする影響力の正体なのかしら…思い返せば執筆だけでも影響を与えてしまうなんて…ヤバすぎるでしょ)えっと、それで、私の事ですが…」
「そうだな、生まれたお前には顔や全身に吾の鱗があった。しかし翡翠の髪ではなく黒い髪だった」
「髪染めをしても…黒が勝ってました」
「恐らく悪しき存在に関係する
『エンブレアスしゃまの炎には浄化の効果があるんでしゅよね』
「そうだ。アヤツは不思議と生まれながらに浄化の効果を持っていた。しかしヤツに触れても浄化される訳でなく、ヤツの炎を受けないと浄化されないと…今思うにとんでもない力だ」
だから浄化の火炙りが帝国の洗礼だったのだ。
つまりエンブレアスから与えられたのは炎の威力の上昇と浄化の効果だ。
そのおかげで、ユリアスの髪についていた汚れは浄化され、本来の翡翠の髪色に戻ったって事なのだ。
黒い蝶に接触されたミアが絡んでるのは確定…色々わかってきたが、問題は残ってる…
無事に解決すれば良いが…
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