第61話

「なんで…」



声がかすれていく。


目と鼻と喉の奥が

同時に


キュッと締め付けられ

うまく声にならなかった。


「なんで、



そんな風に…

思った…んだよ…。


どうし…て、


俺が…

離れていくなんて…



思ったんだよ…



なあ…アカネェ!」


怒りと悲しみを含んだ声が

雪に溶けていく。



アカネの返事はない。


もう遅いのだ。


もっと早く

気づいていれば


何か変わっていたの

だろうか。



僕は生きている。


なぜ僕が

生き残っているのだろうと

何度も思った。


けれど、


僕はこれから先も

生きていかなければならない。


アカネを過去に残して

進んでいかなければならない。



未来が変わる前の

僕だって

そんな事をわかっていた。


今の僕だって

本当はわかっている。




けれど、それは…









すごく辛い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る