最終章 新たなるスタート

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第55話

やはりまだ、


桜の木々は

禿げたままだった。


それも、そのはずだ。


僕らがタクシーを降りた

途端、


降りだしたのは

雨ではなく雪だった。


この調子で

降り積もれば、


明日には

純白の桜が見られるだろう。


この時期ここには

本当に誰も人がいない。


人がいるのは春の、

それも休日くらいなものだ。


「アカネ、

ここにいるのかしら」


髪に雪を

積もらせながら、

加奈が言った。


「どうだろう。


そうかもね…」


ゆっくりと歩きながら、


目の前に広がる

木と雪だけの世界に

僕は目を奪われていた。


「木口くん…」


後ろで続いていた足音が

ピタリと止んで、


僕は振り返った。

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