第56話

「あなた、


まだアカネが死んだのは

自分のせいだとか思ってるの?」



真っ直ぐに届く

加奈の視線を逃れて

僕は足元に

降り積もる雪を見つめた。


そういうわけではない。


そういうわけではないけれど、


もう少し早く救急車を

呼んでいたら


もしかしたら、とか、


別れたりしなければ


もしかしたら、とか


僕らが出逢わなければ


もしかしたら、とか

思ってしまうのは確かだった。



アカネの

突然死の原因は


ストレス等に

よるものだったと、

過去の僕は聞いていた。


僕らは

沢山の言い合いをしたし、

喧嘩もしたし、

もちろんその回数の

仲直りも、キスもしてきた。


けれど、あれだけ

僕がアカネのそばにいた以上、


少なからず

僕が与えた影響だって

あるはずだった。


もし、彼女と

僕が出逢わなければ、


例えば

もっと彼女と“相性のいい”

誰かと出逢って

過ごしていたのなら、


もしかしたら彼女は


今日もどこかで

元気に過ごしていたかもしれない。


考えたくはないけれど、

そうだったかもしれない。

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