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第48話

僕はわざと遅れ気味に

三回忌に向かった。


小さな寺だった。


僕が来た時には

もうほどんど帰る所で、


皆が入り口の辺りで

話している所だった。


そこにいる何人かの

大人の中には、

高校の恩師もいた。


僕を見つけた加奈が

手をひらひらと振って

走り寄ってきた。


「木口くん来たんだ。


久しぶり、


これから皆で

お墓参りに行く所なの」


加奈の反応から

推測すると、


どうやら僕らは

まだ付き合ってはいないらしい。


未来はどう変わったのかは

わからない。



けれど、

僕はついに二年間を

アカネの思い出だけで

過ごしたらしかった。


「そうか、


…あの、

アカネの母親ってのは

どの人かわかるか?」


加奈は一人の女性を

指さした。


その足元には、


小さな女の子が

纏わりついていた。

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