第47話

次の日、


僕は重い腰を上げ、

クローゼットから

黒のスーツと、

黒のネクタイを取り出した。


奥の方に

あのテディベアが

見えたが、


気づかないふりをした。


ネクタイを締めて

鏡の前に立った。


戻ってきてから

初めて自分の顔を見た。


頬の丸みも取れ、

無精ひげも生えている。


やはり三年分

老けた顔をしていた。


髭を剃り、

歯を磨いていると


足元に

柔らかな感触が触った。


ナーンと鳴きながら

クロが僕を見つめている。


首の後ろをガ

シガシとかいてやると、


クロはゴロゴロと

喉を鳴らした。

思わず笑みがこぼれた。



ほんの

一瞬だったけれど、


帰ってきてから

初めて僕は笑った。


と、同時

にどうしようもない感情が

湧きあげてきて、


それは

クロの姿を滲ませた。


一粒の涙が

クロの頭の上の墨に落ちた。


クロはピクッと

反応して


僕を見上げると、

再びナーンと鳴いた。

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