第38話

再び母ちゃんが

部屋に入ってきた。


「今日おじいちゃんの

命日だから、


あんたもお墓参りくらい

行っておきなさい」


そっと携帯を閉じて、

ふらふらと

ベッドに腰を落とした。


…行ったばかりさ。


心の中で

そう言っていた。


「雄大?あんた大丈夫?

顔色が悪いわ」


「俺、いつここに

戻ってきたんだ?」


「いつって、二年前よ。


その…

アカネちゃんが亡くなってすぐ」


「…俺、


過去にいったんだ」


「過去?」


不思議そうに

首をかしげる母ちゃんを見て、


僕は自分の

くだらなさに失笑した。


「でも、


全部意味がなかった」


「夢を見たの?」


「そう、全部夢と同じさ


笑えるだろう。


俺って本当に…」


「もしかして

アカネちゃんの…?」



僕は何も答えなかった。


答える気にも

なれなかった。


僕はただ、


現実逃れに


アカネの夢を見ていた

というだけなのだから。

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