第37話

僕はそのまま

そこに車の中で


夜が明けていくのを

ただ虚ろに眺めていた。



朝になり、

僕は実家に戻った。


母ちゃんが

心配そうに駆け寄ってくるのを

無視して


置いて行った

携帯電話を手に取った。


携帯電話は

変わっていなかった。


過去のまま

僕が使っていたものだった。



着信が来ている。


もしかして、


なんて期待は

一瞬にして破られ、


そこには

“お袋”と表記されていた。


心配して

かけてきたのだろう。


「お袋…か」


今更、

その妙に大人びた呼び名に

冷める自分がいた。

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