第34話

―三時二十分。


未来にうなされて

起きた時間だ。


という事はやっぱり

全て夢だったのか…?


僕の脳裏に

神田さんの顔が過った。


そうだ、


あそこにいけば

何か分かるかもしれない。


僕は慌ててベッドを抜け、

コートすら羽織らずに

部屋を飛び出した。


車に跨り、

猛スピードで

あの場所を目指した。


外はまだ

暗闇に包まれていて、


それが余計に

僕の不安を煽った。


「夢だなんて…


夢だなんて…」


静かに呟きながら、

あの場所に辿りついた。




僕は愕然とした。


そこには


あのプレハブの事務所など

存在していなかったのだ。


膝がガクガクと震えている。


唇も、

手も、

心臓も、

それぞれがバラバラに


そして小刻みに震えている。


そして今の今まで

感じていなかった


一月の突き刺すような

寒さまでが襲ってくる。


この一年は

何だったのだろうか。



全てが夢で、


僕はずっと


寝ていただけだというのか?

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