第20話

アカネは“その時”を

できるだけ


いつも通りに

過ごす事を選んだ。


最後に

旅行に行きたいとか、


遊園地に行きたいとか、


飲んだくれたいとか、


そういうのは

余計に死を意識している

みたいで嫌だと、


彼女は僕の提案を

一切拒否した。


15日の朝―


僕は

携帯の電源を切り、


部屋の

時計の電池を抜き、


腕時計を

棚の奥の方にしまい、


カレンダーを外した。



途端に

この部屋の中に

“時間”というものは

存在しなくなった。


僕はベッドに潜りこみ、

彼女は隣で

上半身を起こし、


僕のスウェットを着て

テディベアを見つめている。


その視線をどうにか

僕にむかせるため、

彼女の腰辺りに

手をまわして抱き寄せた。

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