第19話

「やだ、内緒よ」


「いいじゃん、少しくらい」


彼女はそれでもなお

躊躇っていたけれど、

そのうち静かに口にした。


「…その時は

よろしくお願いしますって」


「その時?」


彼女は黙っていた。


けれど、その沈黙で

僕はすぐに悟った。


そして僕はもう一度

じいちゃんの前で手を合わせた。


そして今度は

心の底から祈った。


“その時は、


俺が行くまでアカネを

どうかよろしく頼みます”


僕が顔を上げると、

アカネはおもむろに

片方の耳から

あのピアスをはずして、


線香皿に置いた。


「こんなとこに

置いってってどうするんだよ」


すると彼女は笑って


「大ちゃんのおじいちゃんに、

これを頼りに

見つけてもらうのよ」と言った。


僕は初めてじいちゃんに

少し嫉妬した。

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