第18話

その真剣な面もちに

思わず

笑ってしまいそうになるのを、


じいちゃんの手前

どうにかたえる。


それから彼女が

選んで買ってきた


できるだけ

明るい感じの花を供え、


線香にタバコ用ライターで

火をつける。


僕が先に手を合わせ、

薄く目を開いて

彼女の様子を窺って見ると、


彼女は僕のしぐさを

じっと見つめていた。


僕は結局

形だけ拝んでいただけで、

何も頼んだり、

祈ったりしなかった。


でも、それは

いつものことなのだ。


こういう時、

何を考えればいいのか

僕にはよくわからない。


それから彼女が

前にたって

一呼吸したあと、

同じように手を合わせる。


なにを話しているのだろう。


自己紹介でも

しているのだろうか。


それも死んだ

僕のじんちゃんにだ。


奇妙な光景ではあったが、

不思議とそれは

いつまでも

見ていたいような感じだった。


彼女が目を開けたのと

同時に、


僕はそれを尋ねた。

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