第6話

「アカネ…」


「私ね、あっちから

衝動的に飛び出してきたの。


なんだろう、


今のままじゃ

取り返しがつかなくなる

ってなぜか思ったのよ。


きっと

虫の知らせってやつね」


僕は狼狽した。


「…いつ、死ぬの?私」


今さっきまで

淡々と話していた口調が、


一気に頼りなさげに

震えているのがわかった。


「言えない」


「お願い、教えて。

私しなくちゃいけないことが


たくさんある」


「しなくちゃいけないこと?」


「残しておきたいものがある」

「……」

「お願い。


私、もう後悔したくないのよ」



一体何が正解で、

何が間違いだったのだろうか。



何がアカネを傷つけて、

何がアカネを癒すのだろうか。


僕にはわからなかった。


ただアカネは

後悔を恐れていた。


僕と同じように

取り返しのつかなくなる

後悔を

彼女も抱えていたのだ。



僕は…、


肝心なところで

嘘がつけないらしい。

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