第59話

「あ?言えね~じゃねぇよ、お前には口があんだろ


言えないじゃなくて“言わなかった”んだろ?


伝えてねーんなら未練あってあたりめーだろ?




振られんの覚悟で最後にちゃんと伝えてこいよ


いつまでもイジイジしてんなよ

男が女に気持ち伝えらんなくてどーすんだよ?



自分の気持ちがどんなにデカくてもなぁ、

口に出して伝えなきゃ伝わるもんも伝わんねーんだよ」






“「成也大好き」


“「成也は?」


二人きりの時に美波が口癖のように言っていた言葉が駆け巡る


“自分の気持ちがどんなにデカくても、口に出して伝えなきゃ伝わるもんも伝わんねーんだよ”





こんな簡単な事だったのか…



冗談なら好きなんて余裕で言ってたのに




美波と付き合ってる時…


俺は一度だって

“好きだ”

って口に出して言えてなかった


文字にしたらたった3文字の言葉…



ただ…

伝わってると思ってた


毎日一緒だったし…


口に出さなくたって気持ちだけはこんなにデカくなってたから…


だけど美波にはちっとも伝わってなかったんだ



『美波は言ってほしかったんだな…』


「女にはそう言うのが大事なんだよ


男にはたいした事じゃねぇけどよ



…このままじゃ、晴奈ちゃんだって傷ついてんだろーが」


成也はしばらくその場から動かずにタバコを吸っていた




『はぁ…

俺なにやってんだろ…



大事なもん…





また無くすトコだったな』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る