12

それから数日が過ぎたが、淳たちの生活は緊張に満ちたままだった。

警察の捜査が進む中で、彼らは毎日がまるで一触即発の状態であるかのように感じていた。

だが、運命の歯車は彼らにさらなる試練を課すこととなる。


ある日、拳から緊急の呼び出しがあった。

淳はその電話を少し奇妙に感じた。

いつもとは違う集合場所であったし、なにより拳の様子もどこかおかしかったからだ。

とはいえ、仲間からの呼び出しを断ることはできない。

淳、莉香、桃子の三人は、指定された廃工場へと向かった。


そこは街はずれにある、古びた工場跡だった。

一応、フェンスで柵はしてあるものの、大人なら難なく乗り越えられる高さである。

三人はフェンスを乗り越え、建物の中に入っていった。

「拳...?」

懐中電灯が照らす先には人のいる気配がしない。

おそるおそる淳が声をかけるも、それに応える拳の声はなかった。

「ほんとにここで合ってるの…?」

莉香が少したじろいだ様子で尋ねる。

桃子は何もしゃべらずにずっと後ろについてきている。

「間違いない...はず...」

自信はなかったが、三人とも同じ場所を目指してきたことだし、間違ってはいないのだろう。

だが、なぜこんな場所に。

そう思った矢先、いきなり淳の視界は真っ暗になった。

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