11

翌朝、淳は重たいまぶたを開けると、部屋の中に漂う不穏な空気を感じた。

昨晩の出来事がまるで悪夢のように頭の中に蘇る。

彼は心の中で、現実逃避を試みたが、その重圧から逃れることはできなかった。

淳がリビングに下りると、母親がテレビの前で顔を真っ青にして座っていた。

ニュースキャスターの声が部屋中に響いている。

「昨夜、都内のスーパーで殺人事件が発生しました。被害者は警備員の男性で、犯人は複数の若者と見られています。現在、警察は捜査を進めており、目撃情報を求めています。」

画面には、昨晩、淳たちが侵入したスーパーの映像が映し出されていた。

警察が現場を調査している様子や、インタビューを受ける店の従業員たちの姿が映る。

その光景を見て、淳の心臓は激しく鼓動した。

「怖いわねえ…」

母親が他人事のような声でつぶやく。

正確には他人事のようで他人事ではない。

淳は何も言えずに、ただその場に立ち尽くしていた。

心の中で罪悪感が膨れ上がり、逃れようのない現実が彼を包み込む。

昨晩の行動がどれほど重大な結果を招いたのか、改めて理解した。


淳は学校へ向かう準備を始めたが、手が震えてうまく動かない。

心の中で何度も自問自答する。

果たして、このまま逃げ切れるのか。

学校に到着すると、廊下はいつもと変わらない喧騒で満ちていた。

しかし、淳の心は重苦しい沈黙に包まれていた。

教室に入ると、莉香、拳、桃子の三人もめずらしく登校していた。

彼らもまた、昨晩の出来事を引きずっている様子だった。

「おい、ニュース見たか?」

拳が低い声で淳に話しかけた。

「ああ、見た。」

淳は短く答えた。

「警察が動いてるって。私たち、大丈夫かな…?」

桃子が不安そうに言った。

「黙っていればバレないわよ。」

莉香が冷静な表情で言った。

「誰も私たちを見てない。証拠も残してない。」

だが、その言葉には確信が欠けていた。

全員が内心、不安と恐怖で押し潰されそうになっていることを感じ取った。

その日、学校での時間は長く、重苦しいものだった。

授業中も、淳は心ここにあらずの状態で、ただ時間が過ぎるのを待っていた。

彼の頭の中には、あの夜の光景と、ニュースで流れた警察の捜査の映像が交互に浮かんでいた。

放課後、淳たちは再び集まり、今後の対策を話し合った。

「これからどうする?」

拳が重い口を開いた。

「とにかく冷静になろう。普段通りに過ごして、目立たないようにするんだ。」

莉香が言った。

「でも、もし…もし誰かが裏切ったら…?」

桃子が震える声で言った。

「そんなことはない。全員が共犯なんだもの。誰も裏切ることなんてできない。」

莉香の声には、決意と冷徹さが込められていた。

4人はお互いの顔を見つめ合い、重苦しい沈黙が続いた。

彼らはこの先の見えない道を進むしかなかった。

罪の意識と恐怖に押し潰されながらも、彼らは共にこの運命を背負うことを決意した。


その夜、淳は眠れずにベッドの中で身を丸めていた。

心の中で、逃れようのない罪の重さが増していくのを感じた。

彼は何度も自問自答した。

果たして、このまま逃げ切れるのか。

それとも、この罪の重さに耐えきれずに崩れてしまうのか。

そして、再び訪れる朝を迎えることを恐ろしく感じていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る