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ほぼ同時に4人とも勢いよく、音のしたほうを振り返った。

と、同時にまぶしくて一瞬目を逸らしてしまう。

もう一度目をやると、そこには懐中電灯をこちらに向けた、60代ぐらいの男が立っていた。

「な、なにをしてるんだお前ら…」

警備員風の格好をしたその男の声は震えていた。

淳たちは呆気にとられた。

これまでの非行の中で、他人に見つかってしまうことはなかった。

今までが上手くいきすぎていたのだ。

だから、この唐突なアクシデントに淳は固まってしまった。

お互いしばし沈黙のあと、意を決したようにその警備員風の男は踵を返して走り出そうとする。

やばい。

そう悟ったが、淳の体は依然として動かなかった。

足の裏が地面に固定されているかのように重い。

極度の緊張からか呼吸も浅く頭が回らない。

だがその刹那、淳の左側から黒い大きな影がその警備員に向かって飛び出した。

そして、瞬く間に警備員に追い付き、彼を羽交い絞めにしてしまった。

淳ではない誰かの懐中電灯がその塊を照らす。

そこには、拘束を逃れようともがく警備員をがっちりと固定する拳の姿があった。

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