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ある日、拳が仕事の依頼を持ってきた。

「ここ、俺が前にバイトしてたスーパーなんだわ。」

拳はなにかそれが面白いことでもあるかのように笑う。

だが、淳は不安を感じていた。

これまで忍び込むのは、もっぱら個人の住居が対象だった。

ここへ来て商業施設というのは、初めての経験だったのだ。

「明日、売り上げを銀行に入れる日なんだわ。だから今日はたんまり現金があるはずだぜ。」

拳は手に持ったバールのようなものを、まじまじと眺めながらそう言った。

「さすがに店はやばくねえか?」

「警備員とかもいるだろ?」

淳はなおも不安を払拭できない。

「心配すんな。あいつらは閉店後はいねえよ。」

そんな淳の様子を、拳は全く意に介していない。

「大丈夫っしょ。ビビってんの?」

梨香も乗り気だ。

こうなってしまっては淳に彼らを止める術はなかった。

淳は一抹の不安を抱えながらも、仕方なく彼らに同行することにした。

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