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それは
特に、親の仕事の都合というわけでもない。
学校側から転校を打診され、世間体を気にした両親が彼を転校させた。
淳は学校には滅多に顔を出さなかったが、たまに顔を出せば喧嘩、カツアゲ、器物損壊などやりたい放題だった。
いわゆる不良少年。
とはいえ、彼の容姿は世間一般的な不良少年のイメージ通りという訳ではなかった。
淳は中肉中背で、特段、相手を畏怖させるような容姿をしているわけではない。
だが、クラスメイトたちは彼を敬遠し、その内にある狂気に怯えていた。
なにも初めからこうだったわけではない。
中学1年生のころまではそれなりに上手く回っていた、と淳は思う。
教育に無関心な父と過保護な母。
ある種、典型的な家庭に生まれた彼にとって、この変化は必然ではなかった。
一人前の人間として認められたいが、父親から相手にされない悲しみ。
母親からは自由にさせてもらえない怒り。
そんな不満が渦を巻いて積もっていき、どんどんと彼は悪い方へ流されていった。
そしてそれゆえに、彼の両親も適切な対処法が分からずに、ここまで淳を放置してしまった。
今では、父は相変わらず淳に無関心で、過保護だった母も自分の手に余る息子をコントロールすることを諦めてしまった。
急に窮屈な首輪を外された淳は、あとは駆け回る犬のごとくやりたい放題であった。
心の奥底では、また首輪をつけて欲しいと願っているなんて気づきもしなかった。
淳自身、なんども立ち直ろうとはした。
真面目に学校に通い、同級生たちと友好な関係を結んで勉強や部活にいそしむ。
そんな普通の生活を取り戻そうと模索したが、そのたびに失敗した。
立ち直ろうと思った時には、もうその方法が分からなくなっていた。
そして積み重なった失敗の経験は、彼を一段と苦悩の底に追いやった。
思い通りに行かない人生。
それと向き合う苦悩から逃げるようにして、淳は非行に走った。
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