The Gangstar of Quartet(ギャングスタオブカルテット)

@takaishi_riku

それは、田辺淳たなべあつしにとって3度目の転校だった。

特に、親の仕事の都合というわけでもない。

学校側から転校を打診され、体面を気にした両親はすぐに彼を転校させた。


なにも理不尽な転校という訳ではなかった。

淳の生活態度はすこぶる悪かった。

滅多に学校に顔を出さないわりに、たまに顔を出せば喧嘩にカツアゲ、器物損壊などやりたい放題。

淳は学校ではそれなりに名の知れたワルだった。


淳は中肉中背で、特段、相手を畏怖させるような容姿をしているわけではなかった。

だが、なにか気に入らないことがあればすぐに難癖をつけ、相手を攻撃する。

それは生徒に限った話ではなく、教師や大人もその対象であった。

そこに見境などない。

だから、彼を知るものはみな、その内にある狂気に怯えていた。


なにも初めからこうだったわけではない。

中学1年生のころまではそれなりに上手く回っていた、と淳は思う。


教育に無関心な父と過保護な母。

彼らのもとに生まれた淳にとって、この変容は必然ではなく偶然だったのかもしれない。

それゆえに、両親も適切な対処法が分からずに、ここまで淳を放置してしまった。


なんとか淳を更生させようと手を尽くしてきた父も、今となっては淳に無関心で、過保護だった母も自分の手に余る息子をコントロールすることを諦めてしまった。


そうして、窮屈な首輪を外された淳は、駆け回る犬のごとくやりたい放題であった。

本当は、自分がまた首輪を求めているとも気づかないままに。

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