第24話

「・・・姫!!」





ぐっと、抱きとめてくれる力が増す。



その力に、抗いながら考える。





どうして、後醍醐帝はこんなこと。



どれだけ彼が、後醍醐帝のために走ってきたか。







「憎い・・・」







ぼろりとそんな言葉が落ちる。



涙も同時に。



制御なんて、できない。





憎くて、たまらない。





後醍醐帝が憎い。


運命が、憎い。




彼はきっと微塵もそんなこと、思ってなどいないだろうけれど。






この運命を、呪う。


この正しい歴史が、憎い。






ああ、もう。






「会わせて・・・お願い、彼に会わせて・・・」





涙の下で、訴える。


一刻も早く、会わせて。




怖くて、立っていられないほどの恐怖が襲う。





歯の根が噛み合わない。



震えが止まらない。




何にも寒くなんてないのに。



いえ、寒さからくるものだと思っていたい。





この胸の内から込みあがってくる震えだなんて、理解したくない。






「会わせて!!」






叫んだ私を見て、直義様は「まずは落ち着きなさい」と言った。




その声を聞いて、瞬時に取り乱したことを恥じる。





慌てて涙を拭って、直義様の支えてくれていた手を振り払って、立ち上がる。




両足を地面に付けて、踏ん張って。



ほんの少しの衝撃で崩れ落ちそうだったから。





「・・・姫・・・」




「お願いします。私を、大塔宮様のもとへ」






直義様を強い瞳で見つめて、言葉を落とす。



声が揺らがないように注意しながら。




直義様はそんな私を見て、驚いた顔をしていたけれど、一度頷く。





「こちらです。どうぞ」





先を行く直義様の背を睨み付けながら、足を前に出す。



そうして、鳥居をくぐるように門をくぐって中に入った。





もう一度、あの場所に立つ。



あの、はじまりの地に。

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