第23話

「・・・なぜ、貴女はここを知っています」





直義様が、上がった息の下で苦しそうに呟いた。



え?と、言葉が出なくて目で訴えながら、直義様を見つめる。




一瞬何も考えられなくなる。




「なぜ、ここだと知っているのです」




なぜ、ここだと?







「大塔宮様の幽閉先がここだと、なぜ知っているのです」







瞬間的に世界が色を失って、黒に没する。



大塔宮様の、幽閉先が、ここだと。




ここだと。





わっと涙が溢れ出す。



立っていられなくなって、ぐらりと体が揺れる。





「姫!」





直義様が、慌てて支えてくれるけれど、もう地面に体が付いていた。


このまま、地面が崩れて700年後に戻れそうだと思う。



あの日と、同じように。





声を上げて泣く。



何だかもう、どうしようもない気持ちになって。






運命がどれだけ残酷か、知った。




偶然なんかじゃない。



絶対に、偶然なんかじゃ。






700年後のこの場所で、彼が待っていたこと、決して偶然なんかじゃ、ない。







彼以外の人の前で、揺らぎたくなどない。



けれどもう止まらない。




「姫、姫。どうか、落ち着いて」



「嫌・・・イヤ・・・」




首を横に振る。




もう、イヤ。



こんな苦しさ、もう。





ふとした瞬間着火して、全身を切なさで焦がしていく。





死なないで。


お願いだから、死んでほしくなんてない。





貴方を失った世界なんて、何にも興味がない。



色付かない世界なんて、何にも。

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