第22話

「雛鶴姫!!」





追ってくる、その声にも耳を貸さずに白銀の道を駆け抜ける。



行き先は、一つしかない。




この道、通った。




700年後のあの日に、通った。





恐らく、同じ道。




引き寄せられるように駆けていく。



道がわからなくなることはない。




だって、知っている。





彼が、呼んでいる。






私の名を、


きっと700年後までずっと、呼んでいる。







思い出すのは、あの氷色。


真っ白い、冷たい青を孕んだ、あの鳥居。




白い、鳥居。





彼の冷たい、手。




あの時、私は思った。




その鳥居を見て、待っている、と。



彼が、待っていてくれる、と。






交わした約束を叶えようと、彼が700年間待っていてくれたのはこの場所。





この銀色の、鎌倉。






足を、止めた。


涙が、ぼろぼろと散っていく。




この、先。



間違いなく、ここ。






はじまりの、場所。








「雛鶴姫・・・」





息を上げて、ぜいぜいと直義様と八束さんと宗忠さんが私に追いついた。



「何て足が速いんだ」



宗忠さんが、額の汗を拭いながらそんなことを言う。


私は答えることなく、ただその場所を呆然と見つめる。




大和は、ないと言っていた。



確かに、ない。




あの白い鳥居は、ない。





ないけれど、確かにここ。



お寺のような、暗い重厚感のある建物が建っているけれど。



門に看板が掛かっている。





臨済宗、医王院東光寺・・・?


いおういん、とうこうじ。





知らない。


聞いたことがない。




けれど明らかにその名前からして、お寺だ。



神社じゃない。




ここかと思ったけれど、もしかして違うのかしら。

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