第19話
「京から離れて、別の地に送られてその行動を制限されます。監禁です」
監禁。
「姫、配流は死罪に次いで、重い刑です」
死刑の次に重い刑。
無期懲役とかそんなものに似ているのだろう。
その罪は、非常に重い。
「宮家の皇子と言えど、罪は罪。罪人の妻がその罪人の傍にいることを、わざわざ許すでしょうか」
普通は許すことはないわねと思う。
そういう人が傍に居れば、反逆や脱獄を望んでしまう危険性がある。
「だとしても、私に彼の身の回りのことをさせてくださいませ。私は引きません、絶対に」
絶対に、諦めない。
だって鎌倉まで来たのだ。
泣きながら京へ戻るなんて、考えられない。
彼に会えなかったと嘆きながら、あのキンノクニへなんて戻りたくない。
絶対に。
同じ空の下にいるのだから、会いたい。
「姫、何度も申し上げますが、できませぬ」
「私も何度も申し上げます。どうか彼の居場所を」
私も直義様も、引かない。
一歩も。
だって互いに、どちらか一方が引いたら負けだと、気付いているから。
「姫、私の答えは決まっております。それはできない」
「ならば、首を縦に振ってくださいますまで、私はここから離れません」
この場から。
睨み付けるように、直義様を見つめる。
戸惑ったように瞳を揺らして、私の視線に耐えられなくなったのか、俯いて「なりません」と呟いて立ち上がった。
そうして足早に部屋から出て行く。
その音を聞きながらも、まだ私は直義様がいた場所をじっと見つめていた。
「・・・あんたは、本当に怖いものなしだな」
宗忠さんが溜息を吐いて項垂れた。
「こっちの肝が縮むぜ・・・」
八束さんも床に滑り落ちてそう呟いた。
「・・・怖いものなんて、沢山あるわ」
沢山、ある。
本当に、沢山。
けれど、大塔宮様に会いたいと思う気持ちのほうが勝っている。
暗闇の中を、一人で駆けていく恐怖に似ているけれど、それでも私は光のある方へ引き返すことなんて絶対にできない。
「それでも会いたい人がいるから」
そっと微笑んで、また前を見据える。
こんなところで立ち止まるわけにはいかないと思って。
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