第4話

白い。




ぼんやりとそう思う。



光が満ちた世界で、そんなことを思っていた。




朝だ、と思って開けた目に飛び込んできたのは呉羽の背だった。



すっと柔い衣擦れの音が響いて、呉羽の白い背は薄い青の衣に包まれる。




頭が上手く働かない。


不意に傍にあった熱が消えて、寒いと思う。



ぼんやりと考える。




何で呉羽が俺の傍にいるのかとか、


何で、呉羽が裸でそこにいるのかとか・・・。




そこまで考えて、両目をバチっと開けた。






やっべえ!!!!マジでヤバイ!!!!と思って両手で顔を覆う。







「・・・大和様?」



俺が驚いて顔を覆ったのに気付いて、呉羽は俺の名を呼んだ。




「ごっごめんっっ!!!ごめん、呉羽っっ!!俺っ!!!」



「何故謝りまする」




慌てて起き上がってそう叫んだ俺を見て、呉羽は呆れた顔をした。




「だっ、だって俺、昨日っ・・・!!」





これはもしかして、土下座ものかもしれないと思ってまた突っ伏す。



流れとは言え、結構強引だったような気がするし、俺、本気で呉羽に酷いことをしてしまったかもしれない!!






「・・・昨夜、私を抱いたこと後悔していらっしゃるのですか?」






そっと伸びたその声を聞いて、ガバリと起き上がる。





「してない!!」






叫んだ俺に、呉羽は驚いた顔をしたけれど、すぐに笑った。




氷が解けるような笑顔で。


それを見て、何だか恥ずかしくなる。




頬が熱くなった。





「では何故、謝りまする」






なぜ?



そんなの・・・





「・・・呉羽のほうが後悔していると思ったから」





「私が?」





こくりと頷く。





「だって俺、呉羽のことどう思っているかとか言わないまま抱いちゃったし・・・」





本気で駄目だよな、俺、とか思いながらしどろもどろそう言うと、呉羽は声を上げて笑った。




そうして、微笑む。





「・・・真面目なお方」






「真面目って、そんなことない」



「そうですか?男の方なんて、そんなものでしょうに」






呉羽がそう言ったのを聞いて、首を傾げて考える。



そうだった、この時代の貞操観念って狂ってるんだった。




夜這い万歳!!みたいな時代だった。

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