第3話

「・・・本当に」



「え?」




顔を上げた呉羽に、問う。







「本当に、何もかも、忘れさせてくれる?」








七百年後のことも。



姉ちゃんや大塔宮様のことも。





俺が俺の手で犯す、多くの罪のことも、全て。






ただ、一瞬で、一時でいいから。




呉羽はそっと微笑んだ。



さらに引き寄せられて、口付ける。







ああ、もう、止まらない。








その細い白い腕を床に強引に押さえつけて、黒髪を掻き分ける。




赤い唐紅の衣を、乱雑に暴いていく。





闇が、濃さを増す。




俺の腕に、体に、絡みつくように濃さを。





ただ、その中で月光が降り注ぐ。




赤の下に覗いた青白い肌に落ちて、白銀に煌く。






忘れたい。



何もかも。





その願いを聞き入れてくれるように、何も考えられなくなってくる。





ただただその白銀の肌に、この手で唇で、色を重ねていく。






乱雑に。



薄紅に、汚していく。





斑に発色するその色を見て、美しい、と単純に思う。







それを見ながら、思った。



男って、馬鹿なイキモノだよなって。

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