王手
第82話
革命と言うものは、栄光と失脚の表裏一体。
武力的な革命は終幕を迎えたけれど、今度は血の流れない争いが待っている。
それこそ血を分けた兄弟でも、蹴落とし蹴落とされ、誰よりも上に立とうとするのが正解。
だって真の勝者は一人しかいない。
それには俺がなる。
絶対に。
最早それが俺の生きる意味になっている。
「・・・やはり足利に敵対する意志はない、か・・・。」
後醍醐天皇は、確かめるようにもう一度呟く。
「その御言葉に、相違ございませぬ。」
ふふ、と笑って少しだけ頭を下げる。
「・・・あれは、私の為によくやってくれている。驚くほどな。」
そんな言葉を、ぼそぼそと呟いた。
まるで俺に言ったようには聞こえないほど小さな声で、それでいて強かった。
恐らく、己に言い聞かせているのだと思う。
確かに、大塔宮様が動いているのは後醍醐天皇のためでしかない。
大塔宮様が帝位を望んでいないことも、俺は一時大塔宮様のお傍にいたからよく知っている。
全て父君であるこの今上陛下のためだと言うこと、よく知っているよ。
およそ大塔宮様に邪心はない。
そんなこと、すぐにわかる。
純粋な、父を思う気持ちと、その力になりたいという思いだけ。
だけなのに、運命はねじ曲がっていく。
「・・・やってはくれているがな。」
度が過ぎていると。
裏に隠されている言葉を汲んで、胸の内で嘲笑う。
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