第70話

「で、きない・・・。」






真白は呟いた。




その声で、真白へと意識を戻す。





できない?






「俺には大塔宮様を裏切るなんて・・・できない。」







そう言うと思ったよ。



真白は。






どこまで模範的な生き方をすれば気がすむって言うんだよ。






「・・・一生、京へ戻ってくることもできなくなるよ?」






一生。



だってその途中で俺が真白を殺すから。





真白はあからさまに動揺して、瞳を揺らす。






「・・・一生、姉ちゃんに会えなくなっちゃうよ?」







諭すように、呟く。




「それでも、いいの?」





それでも。



いや、もうどうだっていいのかもしれないけれど。





真白は呆然と俺を見つめる。



言葉を失ったかのように。





「ねえ。」




「顕家様っ!!」




答えを促そうとした時に、声が上がった。


智久さんの声。




駆けよってきて、俺を突き飛ばして刀を抜く。






「消えろ!!一刻も早く!!」






けれど俺の顔を見据えて、ぐらりと一度瞳を揺らす。



大きな隙ができるのを見て、え?と思う。

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