第61話

「私は後醍醐帝第四皇子、尊澄。義姉上様になるのだから、宜しくお願いします。」






義姉上に。



また一人、私に家族が増えた。






「でも・・・どう見たって私のほうが年上だな。」




淡々と言葉を落とすその姿は、決して揺らがない。





「兄宮様よりも私は、三つ下になる。貴女のほうが下だと思う。」




「そうですね。」





ふふ、と笑う。



けれど、この両目は揺らがないようにその目を射ぬく。





それを見て、四の宮様は一度頷いた。







「なかなか、兄宮様は良き姫を選ばれたようだね。このような瞳をする姫はそこらにはいらっしゃらない。」




「・・・ありがとうございます。」





「顕家、今日は泊まっていってもいいか?もっとお話がしたい。」




「構いませぬよ。すぐにお部屋を用意させます。智久!」





音もなく、御簾が上がって智久さんが顔を出す。



真白くんはてきぱきと泊まる部屋の指示をしていくのを聞いていた。





「・・・今日は夜分遅くに申し訳ありませんでした。また明日、お話し致しましょう。」





「はい。」





顔は似ていないけれど、どことなく感じる彼の空気。



身のこなしだとかが似ていて涙が出そうになる。






また明日。



また、会いましょう。






そんな約束が、こんなにも尊いものだったなんて。






その背に彼の背を重ね合わせて、そう思った。

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