第57話

「ああ、そうか。」




真白くんは納得したように頷いた。



えっ?!助けてくれるんじゃないの?!と叫びそうになった。




「南の御方様の眉は、それでもお太いので・・・。」





飛鳥ちゃんはおずおずと真白くんを見上げて呟く。



悪かったわね!と、声を荒げたい。




確かに現代にいた時も、太いって思っていたし!





「そうですね、こんなに潔い眉はなかなかいらっしゃいますまい。」





そんな声がして御簾が上がると、智久さんもにやにや笑って私を見ていた。




「潔くて悪かったわね!」



「ふふ、南の御方様、お言葉遣いを。」




しげちゃんがすぐに横槍を入れる。



くそっと思って、唇を噛む。





「い、潔くて悪かったですわ。」





言い慣れていない言葉は、何てやっかい。


自分のものでないから、嘘みたいに薄っぺらい。




そんな私を見て、真白くんは笑っていた。





「いいでしょ、そのままで。」




「え?」





全員が顔を上げる。



驚いて。






「大塔宮様は、その眉が好きだって言ってたのを聞いたことがある。きっと抜いたら残念がると思うよ。」







大塔宮様が。



胸が弾んだと同時に、冷たい痛みの感覚も襲う。




真白くんに言われたことが、何となく世界を凍てつかせる。






「まあきっと、周囲からは変な姫扱いはされるだろうけど。」






にこっと笑って真白くんは言った。




「い、いいわよ、別に・・・。」




飛鳥ちゃんは物足りなそうに、瞳を歪めた。



どうしても馴染めない文化もあるのと思って、ごめんねと心の中で謝った。

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