第54話

「雛鶴姫、は大塔宮様のご側室様として知っている人は知っているからね。」






ああ、そうかと思って小さく頷く。



月子と名乗ったときと同じように、この名をここでほいほい名乗ることは危険。



私は一応北畠家の娘になっているんだし。




まだ、雛鶴が南と同一人物だと周囲に知られないほうがいい。



もしかして、真白くんが私のことをこちらに来てから、姫、姫呼ぶのもそのせいかしら。





とにかく、また一つ、私の名が増えた。






彼に、怒られるかしら。



これ以上増やすなと言われたのに。




ううん、承知の上よね。





南。






まだ、どこか歯がゆいその名。




この金色の国での私の名。





4つ目の名。







「もう一人、女官をつける。しげは宮中のことには疎いからね。」




「え、ええ・・・。」




「先ほどお会いしました。赤松家の者だと。」





しげちゃんが真白くんを見て笑った。




赤松。



確か彼の側近の一人の赤松則祐くんの家。






「そう。赤松は大塔宮様と繋がりが深いし、息子の則祐は俺とも仲がいいからね。智久!」






真白くんが声を上げると、智久さんが颯爽と部屋に入ってくる。




「はい。」



「赤松のところから来る女官は傍にいる?」




「参上しておりますよ。お呼びいたしますか?」



「うん、呼んで。」




智久さんは頷いて、また外へ出て行った。

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