第45話

「姫はすぐに顔に出るんだ!考えてることなんて簡単にわかるよ!」






「わ、悪かったわねっ!」





抗うと、真白くんはさらに笑う。



無邪気に笑ってくれる。






「・・・顕家様、親房様からそろそろお召しのお時間だと。」




智久さんが、笑っている真白くんをたしなめるように言葉を落とす。




真白くんはそれを聞いてすぐに笑うのをやめて端正な顔立ちに戻った。





「ああ、そう。わかったよ行くよ。」




「ええ。私は姫の護衛を頼んでからすぐに参ります。」





「・・・わかった。」





真白くんはそれだけ言って、すぐに立ち上がる。



数歩行ったところで、思い出したようにこちらを振り返った。






「・・・大塔宮様に、書簡を書いたほうがいいよ。智久に渡せば、持って行ってくれる。」






「え?」





一気に翳ったその姿に、聞こえてはいたけれど尋ね返す。




けれど真白くんはそのまま足を前に出して部屋から出て行った。






大塔宮様に、書簡。



手紙。





そうよ、ね。



手紙、書かなければ。




やっぱり子供ができてましたって、報告しないと。





私、字が上手く書けないけれど大丈夫かしら。




でも彼も私が現代の字しか書けないの知っているし・・・きっと大丈夫よね。





そんなことを悶々と考えていると、不意に隣りから声が上がった。






「姫様。」



「えっ?・・・あ、はい。」






反射的に上げた声を言いかえる。



私を見つめる智久さんの目が、真剣だったから。




一気に不穏な切迫した空気が張り巡らされる。





何か、不味いことをしたかしら?と思ってひやひやと背筋が冷えてくる。

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