第43話

静寂を破ったのは、悲鳴に近い声。






「顕家様っ!!」



「あーっ!!もう、煩いな、智久は!!何も言うなっ!!」





「申し上げるに決まっております!!何ですか!今のはっ!!露骨にあんなに喜ばれては、女官が不審がるのもわかります!!」





「わかってる!!悪かったって!!」






珍しく、真白くんが負けているわ。




だなんて、悠長に考えていられるわけがない。






「で、でも大丈夫かしら、智久さんの子だなんて・・・。」





「大丈夫も何も、ああ言うしかなかったんだよ。悪かったね、俺がおかしかった。」






また頬を赤く染めて、真白くんは困ったように眉を歪める。






「いいのですよ。姫。主の不始末を片付けるのも側近の役目でございます。」





「智久さん・・・。」




さもないと言うように笑った顔は、落ち着き払っている。





真白くんよりも二つ上だって聞いたから、私よりも恐らく一つ下だと思うけれど、本当にしっかりしている。



時折、馬鹿みたいにふざけているけれど、恐らくそれは仮の姿。





そう言えば、真白くんって私よりも三つも下なのよね。





どうして、私みたいなのがいいんだろう。







もっと可愛くて、もっと若い子だっているだろうに。



そう思うこと自体、もうおばさんなのかしら。






「騙されないでよ、姫。元々そう言う算段だったんだよ。」





「え?」





眉を歪めると、真白くんは口を開いた。





「その御子が、大塔宮様の子だと知れると姫の命が危険だ。」





それは、金剛山にいたときから知っている。



だから彼はごく少数の人にしか子供の存在を知らせなかった。





「ええ。大塔宮様もそれを危惧していらしたから。」





頷く。



真白くんはすっと智久さんを見た。




智久さんは真白くんを見てから私を見た。







「ですので、その御子がご誕生になるまで、もしくは大塔宮様が御戻りになるまで、当分私と姫の子にしておくのが望ましいかと。」







智久さんはにっこりと笑った。



それを聞いて全て理解する。

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