第40話
「・・・全力、か。」
「はい。全力で、何一つぬかりなく。」
にっこり笑うと、廉子様はぎゅっと唇を真一文字に結ぶ。
「・・・護良が・・・。」
後醍醐天皇が不意に声を上げる。
「護良が、帝位に就いたらどんな未来が待っている?」
どんな?
そんなの知らない。
だってそんな未来、存在しない。
けれど。
「・・・主上の望むような未来は待っておりませぬ。」
何を本当に望んでいるのか、本当はよくわからないけれど、そんな曖昧だけれど最強の言葉で説き伏せる。
「そうか」と呟いて、後醍醐天皇は何かを考えているように瞳を伏せる。
「・・・正しい未来へ、導いて差し上げます。ただし、先ほども申し上げましたが、御二人のご協力が必要です。私に、ご協力を。」
にいっと笑う。
このまま、全て壊れてしまえと強く念じる。
「・・・協力とは?」
「ただ、何事においても、私の助言を一度検討してくださいませと言うことです。ただ、それだけ。」
言うことを聞けと言ったら、ただの脅迫になる。
疑いの芽が芽吹いたって仕方無い。
検討、であれば、俺が主体ではなく、後醍醐天皇が主体になる。
自分の意見がある程度自由になると言う意識があれば、俺の言うことを聞きやすくなる。
ある程度自由になんて、させないけれど。
「・・・私は今、足利高氏の元におります。」
「「なっ!!!」」
後醍醐天皇と、廉子様が叫んだ。
そりゃ驚くだろう。
大塔宮様があんなにも足利高氏の所領には行くなと言って警戒しているのに、その足利家の者が、目の前にいるんだ。
今にも叫びだしそうなその瞳を見つめて、一度微笑んだ。
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