第39話
「大和の知る未来では、私の子が帝位についているのだな?!」
突然、恐ろしい形相で、廉子様が叫ぶ。
今にもその扇を俺に投げつけてきそうになっている。
不覚にもヒステリックに叫んだその声で、体がビクリと震えた。
「・・・そうでございますよ。私の見た未来では、そういうことになっております。ですが・・・。」
「ですが?!」
ギロリと廉子様が、俺を睨みつける。
それを見て、にいっと笑った。
まいた餌に、かかった、と思って。
「ですが、そこまで行くのには、お二人のご協力が必要だと言うことでございます。」
「どういうことだ?!」
イライラと、廉子様を包む雰囲気が悪化している。
早くしろとでも言うように。
「未来と言うものは、コロコロ変わるのです。本当にほんの少しの弾みで。」
そう言うと、廉子様は目を見張った。
その体が、ぐいっと俺のほうへ向けて前のめりになっている。
「正しい歴史は、廉子様の御子様が帝位に就くこと。けれど、同時に大塔宮様が帝位に就く未来も存在するのです。」
さらに上を。
さらに先を行く。
先の一手を放つ。
まさか大塔宮様は俺が二人に接触しているなんて思いもしないだろう。
「黙って傍観していて、正しい未来が待っているのならば、私は今ここにはいない。」
はっと息を飲む声が聞こえた。
廉子様と、後醍醐天皇から。
「間違った、未来が色濃くなっているのです。だから正しい未来を望む為に、今、私は御二人の前にいるのです。」
廉子様が、持っている扇を強く握った。
しなる音がして、ひやりとする。
「・・・私の子が帝位につくには、それなりの努力が必要だと言うことか?」
飲み込みが早い。
本当に、頭が切れる人間は嫌いじゃない。
「・・・はい。全力で、正しい未来へ導かないとなりませぬ。」
全力で、蹴落としてみせる。
容赦なく、もう二度と這い上がって来れないところまで。
廉子様は憎い、とでも言うように瞳を歪ませる。
おしろいで顔を真っ白く塗っているけれど、それでも尚狼狽しているのがわかる。
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