第23話

そっと、唇が弧を描く。


さらに、深く、深く。




ああ、後醍醐帝の背後に俺がいると知ったら、大塔宮様はどんな顔をするだろうか。





俺と同じ絶望を、二人にも。




そう思ったら、少し心が軽くなった。






「・・・後醍醐帝を操って味方につければ、大塔宮様は俺たちに手を出せない。そうだろう?」






同意を促す。




後醍醐帝が俺たちを危険視していなければ、大塔宮様が俺たちを排除しようとしても絶対に戦は起こらない。



帝が了解しなければ、戦なんぞ起こらない。






「・・・確かに。」




高国は呟いた。



高氏はまだおろおろと瞳を揺らす。






「当分何もしなくていいよ。何か起こることは絶対にない。俺はどこまで行っても足利の人間だから。ね?」






にっこり微笑むと、高氏はようやく落ち着いたように大きく息を吐いた。





「じゃあ俺は出かけてくる。今月中には戻るよ。大丈夫。」






深く笑う。





さあ、もっと。



もっと、面白くなれ。





もっと、あの二人に波乱と絶望を。






もう、迷わない。





容赦なく、蹴り落としてあげるから。

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