第22話

だから、大塔宮様は金剛山を降りない。



武装解除しない。



睨みを利かせている。





確かに、未来を知らなければ、それは思ってもみないほどの脅威だとわかる。





けれど、そんなのどうだっていい。







「大丈夫、俺は歴史を知っている。これから、後醍醐帝に会って、その懐深く潜り込む。大塔宮様に手出しはさせないくらい深いところまで、後醍醐帝の中にね。」






この日本の頂点。




帝。






そいつを操るって、どんな気分かな。




想像するだけで、ぞくぞくと背が鳴る。





楽しい、と頬がゆるゆる上がる。






ああ、もう。



想像するだけで楽しい。






大塔宮様が、失脚していく姿を想像するだけで。







こんなにも、強く思う。



姉ちゃんの姿を瞼の裏に思い描いて、全て壊れてしまえと願う。






俺の言葉を聞かなかった罪。





不幸に、なるよ。と言ったのに、その忠告を聞かなかった姉ちゃんの罪。







絶対に、陥れてやる。




俺が知らなくていい感情を知ったのも、



こんなにも苦しくなるのも、全ては大塔宮様のせいだ。





そう、大塔宮様の。





全ての元凶は、あの男。






破滅の底に、叩き落としてやる。







姉ちゃんも、一緒に。

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