第20話

一度、にいっと深く笑った。






「・・・後醍醐帝の元へ行く。」







後醍醐天皇の元へ。



会えるかどうかわからないけれど。






もっと面白く、もっと楽しく、したいだろう?







「な、何を言っている・・・。」



「や、大和・・・それは一体・・・。」





二人はぽかんと口を開けてそんな言葉を落とす。






「言葉の通りだよ。後醍醐帝の元へ行く。それだけ。」





「そ、それだけとは?!戦は確かに終わった!!けれど、足利はどうするのだ!!このあと、俺はどうすればいいのだ!!」






ぎゃあぎゃあと叫ぶ高氏を、


見苦しい、と思った。





けれど、俺は高氏のそういう自分しか考えていないところ、大好きだ。





まるで俺がいないと何もできないと嘆く姿が、大好き。






ふっと笑った。



唇の端に笑みだけ乗せて。






「大丈夫。これで俺が足利家を見捨てるなんてしないよ。ただ、少しだけ後醍醐帝の元へ行って来る。もっと潤滑に、高氏の手にこの国の覇権を渡すために、後醍醐帝に会いに行くんだ。」





「お・・・俺の、ため?」





高氏は戸惑ったように瞳を揺らす。





誰が、高氏のためになんか。






「・・・そうだよ。高氏のため。高氏が開く、次の武家政権のため。」






正しい、歴史のために。



そう言うと、高氏は言葉を失った。





「け、けれど・・・今は、時が悪い。」






何も言えなくなった高氏に代わって、高国が口を開く。





「何が?六波羅探題は崩壊した。鎌倉の鎌倉殿もすぐに崩壊する。足利家に敵はいないよ。」






敵は、いない。




いないからこそ、もっと面白くする。





こんなんじゃ、つまらないから。






俺は、歴史を知っている。





もっと面白く、破滅に追い込まなければ。

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