第5話

あの赤の果てに、


誰かの命の上に、





広がる世界は、こんな美しい国であればいい。







そう願うけれど、どこかに染みつくあの青。




瞳を細めて、じっと都を見つめて歩く。






あのどこかに、大和がいる。






そう思ったら、心拍数が駆け上がっていく。



ほんのすぐ傍にいる。





大和は、私に会いたいと、思うのかしら?






もう、一年半経つ。



この世界に来て、もう。




その間、一度も会っていない。






どう、しているのかしら。



大和は今、何を考えているのかしら。





揺らがないように、じっと都を見つめる。



大和から、目を逸らしてはいけないと思って。






会おうと、思った。



大和に、会おうと。






拒絶されるかもしれない。



それでもいい。






あの時大和の手を振り払ったのは、私の罪。






どこまで行っても消えることのない私の。





私は誇れるような人間じゃない。



私はあの瞬間、私を取った。





彼に携帯電話を見られたくなくて、



彼の傍にどうしても居たくて、





大和よりもこの感情を優先してしまった。







私は汚い。






どこまで行っても、何をしていても、重く圧し掛かる。




きっと一生後悔する。





謝っても、例え許してもらえたとしても、一生後悔する。





どこかに引っかかる。






でも、このまま何もなかったことにはできない。



一生大和に会わないまま生活するわけにはできない。






だって私はもう決めている。






この時代の人間になるって決めている。




現代よりも彼を選んだことは、何も後悔していないから。






会いたい、と思う。



そしてまた、私と笑ってほしい。







あの金色が、翳って見えることがないようにと、願った。




涙をこらえて、強く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る