第4話

「ほら、見て。」





真白くんが唐突に指をさす。



その指を伝って、その先に広がる世界を見る。





思わず、「わあ・・・。」と声を漏らしていた。




すごい、と思って。







「京の都だよ。」








整然と並ぶ碁盤の目状になっている町並みが、少し小高い場所から見るとよくわかる。



現代の京都には、何度か行ったことがあるけれど、こんなにも碁盤の目がくっきりと見えたことはない。





何て、美しい。






ビルや、高い建物がほとんどないせいか、すっきりとした町並みに心が震える。







「この国一番の雅やかさと、華やかさを持つ都だ。」








その言葉が、すんなりと心に染みいる。



感動しているのかしら。




この都の美しさに。





七百年後の誰もが見ることのできない光景を、私は今見ている。



幸運なのか、不運なのかよくわからないけれど。






でも、現代にも繋がっていると確信する。




私の歩く、


彼の歩く、


真白くんの歩く、



その京の道は、七百年後の現代でも誰かが歩いている。





同じ道を、きっと七百年後も誰かが踏みしめて歩いている。








「・・・行こうか。」





真白くんはそっと私の手を引いて、その場から離れる。




改めて、実感する。





ここは七百年前の世界なのだと。



私は、タイムスリップしたのだと。





この世の理を歪めて存在するこの身を、できれば幸せだと思いたい。








眼下に広がるあの国は、煌びやかに見えた。


きらきらと、光る国。





金色に、光る国。






きっと希望が詰まっている。






金の国。







今までとは全く違った世界が待っている。





山深い緑でもなく、


血の赤でもなく、


悲しみの青でもない、





金色に煌めく世界が待っている。

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